研究課題
放射線照射にはがん免疫のアジュバント効果があることが示されている。照射による免疫原性細胞死により、腫瘍特異抗原とともにDamage Associated Molecular Patterns (DAMPs)が“Danger signal”として放出され、抗原提示細胞である樹状細胞(DC)を活性化する。活性化したDCはその抗原を提示してT細胞を活性化し増殖させるが、腫瘍細胞上のPD-L1はT細胞上のPD1に結合し、その増殖を阻害する。そこで本課題では、腫瘍に対する放射線照射後にDCと 抗PD-1抗体を投与し、その併用効果を検討した。該当期間では、マウス大腿皮下メラノーマモデルを対象として、局所的X線照射後に、骨髄由来DC(BM-DC)と抗PD-1抗体を併用することで腫瘍免疫反応が増強されるかどうかを検討した。C57BL/6マウスから採取した骨髄細胞(BMC)をGM-CSFおよびIL-4を用いてBM-DCに分化させた。 C57BL/6マウスの大腿皮下に同系B16メラノーマ細胞を移植し原発腫瘍とした。移植から5日後にこの原発腫瘍にX線(8 Gy)を照射した。照射後、1、3、5、7日にBM-DCを局所投与し、同様に、照射後1、3、5日に抗PD-1抗体を腹腔内注射した。また、反体側の大腿に転移腫瘍を移植してから、原発腫瘍のみを同様のプロトコールで治療したときの転移腫瘍の増殖抑制効果を検討した。その結果、X線照射、BM-DC投与、抗PD1抗体投与の3療法の併用は、各治療の単独または2つの組み合わせと比較して、原発腫瘍の増殖を優位に遅延させ、生存期間も有意に延長させた。さらに反体側に移植された転移腫瘍に対しても優位な増殖抑制効果が示され、生存期間も有意に延長された。以上からこれらの併用により、腫瘍免疫反応が賦活され、局所制御のみならず転移腫瘍の制御も可能であることが示された。
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