現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では加速器や原子炉等からの多種類の量子ビーム(中性子、陽子、光子など)を用いて、核反応による反跳効果を利用し、C60やC70フラーレンへの各種放射性同位元素の内包化を目指した実験・理論的検討を行っている。特に本実験では生体内イメージングや線源内療法を遠視野に入れたTc-99m及びAu-194、At-211, Cu-67などの放射性同位元素内包の可能性(Tc-99m@C60, Au-194@C60, Cu-67 etc.)の検討を行っている。このためにまず、Tc-99mの製造量を見積もる実験を行っている。本実験では20MeV~40MeVまでの電子線によるMo-100(γ,n)Mo-99反応→β→Tc-99mによりTc-99mの収率の検討を行ない、国際会議や国内会議発表等を行ってきた。現在、核的反跳を利用したTc-99m@ C60の可能性について調べている。電子線加速器からの30MeV、100μAの電子線を用いて照射で標的物質内では、Mo-100(γ,n)Mo-99反応が起き、この核反応では中性子や即発γ線の放出を伴うので、核反応生成物のMo-99は反跳を受け,この反跳を利用したMo-99のC60へ内包させる実験を継続中である。 本研究施設には研究用原子炉(KUR)が設置されていて、実験はこの原子炉を用いて放射性同位元素を製造し、ホットアトム(反跳)効果を利用し、内療法を視野に入れて放射性同位元素ナノコンテナの製造の試みを目的としている。しかし、福島第一原発事故後に原子炉や核燃料等に新しい規制基準が導入され、この3年間研究用原子炉の停止を余儀なくされた。現在、KURは定期検査中であり、本年6月末よりKURも稼働予定であるので、多少遅れてはいるが、原子炉を用いた実験も可能となる。電子ライナックの稼動も混み合っており、ビームタイムが充分に取れなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本計画では医療に有用な放射性同位元素を核反応で製造し、その原子核反応の反跳エネルギーを利用し、放射性異原子を内包させる手法を用いている。さらに各種量子ビーム(中性子線、陽子線、光子など)実験により、核反応による有用RIの素過程の収量見積もりを継続する予定である。また実際に反跳効果を利用してTc-99m@C60の可能性を調べる、そのシミュレーションの結果が得られつつある。また、同様の方法により、Au-194@C60等、他の核種についてもの合成を試みている。平成28年度は研究用原子炉が稼働せず、(n,γ)反応を利用した実験が不可能であった。本年6月末より研究用原子炉(KUR)が稼働予定でるので実験が再開される。これらの医学利用可能な線源を、内療法を視野に入れて、(n,γ)反応を用いて放射性同位元素ナノコンテナの製造を試み、大量合成法の可能性も探る。具体的にはまずMo-98(n,γ)Mo-99の製造試験を行い、次にC60との混合物を原子炉で照射することにより、(n,γ)反応による反跳でC60に内包可能かどうか調べる。また、他の有用核種Cu64[Cu-63(n,γ)Cu-64反応], Rh-105[Ru104(n,γ)Ru-105反応], Zn64[Zn-64(n,γ)Zn-65反応], I-131[Te-130(n,γ)Te-131→β-→I-131反応]などの収率をしらべ、同様にC60内包フラーレンの可能性を探る。さらに、陽子線加速器によりPt-194(p,n)Au-194反応によりC60に内包可能かどうか調べる予定である。最終的に本年度中にTc-99m@C60の可能性と、また、同様の方法により、Au-194@C60等の結果をそのシミュレーションの結果とともに、国際会議や学術論文として発信する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)福島第一原発事故後に原子炉や核燃料等に新しい規制基準が導入され、その準備のためにKURも予想以上の停止期間が長引いた。平成29年11月より稼動の準備(現在、KURは定期検査中であり)、本年6月末よりKURも稼働予定であるので、多少遅れてはいるが、原子炉を用いた実験も可能となる。電子ライナックの稼動も混み合っており、ビームタイムが充分に取れなかった。平成30年度までに1年延長したが、本年度は本計画を終了予定である。 (使用計画)本年度は結果の公表を前提に研究活動を行う。具体的にはすでにThe 11th International Conference on Methods and Applications of Radioanalytical Chemistry (MARC-XI), Apr. 8-1, 2018, Hawaiiにおいて発表を行った。また、The 10th International Symposium on Technetium and Rhenium; Science and Utilization (ISTR2018), Oct. 3-6, 2018, Moscowで発表の準備を進めている。本年度はこれらの国際会議及び国内会議の旅費に充てる。また、化学薬品、照射用器具類などの実験用消耗品を購入する。
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