研究課題
本研究では、多角的なイメージング法による高精度ながん診断への応用を目指し、最もがん選択的なタンパク質の一つであるsurvivinをin vivoで選択的に検出できる放射性核種や近赤外蛍光分子にて標識したマルチモーダルイメージングプローブの開発を目的とした。そこで、survivinが細胞質内に存在するタンパク質であることを考慮して、代謝安定性に加えて膜透過性の高い新規survivin標的ペプチドの開発を行った。これまでに我々が見出してきたsurvivin高親和性ペプチドを母体化合物として、アミノ酸1置換体、非天然アミノ酸置換体、r4誘導体、r5誘導体、r7誘導体を開発し、いくつかの化合物に関しては、これまでに開発したペプチド分子に匹敵する高親和性(Kd<100 nM)を示した。続いて、前年度に引き続き、survivin結合応答型蛍光プローブへの応用を目指し、survivin結合分子に、その認識部位に相当するsurvivin由来の部分ペプチドをリンカーに結合させ、さらに蛍光色素のFluoresceinおよび消光分子のDABSYLを導入した分子(FDMPs)の開発を試みた。この分子プローブは、FRETの原理に基づき、survivinに結合した時にのみ蛍光を発することで、生体内におけるsuvivinの挙動を追跡できる蛍光プローブとして機能すると期待される。その結果、FDMP5がsurvivinタンパク質存在下とヒト血清アルブミン存在下において、約3倍の蛍光強度上昇の違いが観察された。また、FDMP5 の細胞への結合評価を行ったところ、survivin高発現細胞では強い蛍光シグナルが検出された一方、survivin低発現細胞ではほとんど蛍光は検出されなかった。従って、FDMPは、survivinの結合に応答して特異的に蛍光を放出する分子プローブとして機能することが示された。
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