研究課題
陽子線マイクロビーム細胞照射装置SPICEにおける細胞核・質の打ち分け技術を確立し、本装置の有効性を実証した。そして、放射線による細胞質損傷とその細胞応答ならびにDNA修復機構に対する作用機序を明らかにすることを目的とした。ヒト肺正常WI-38細胞の細胞核(N)、細胞質(C)、またはその両方(N+C)に陽子線を照射し、それぞれの照準部位に対する生物効果を評価した。また、細胞核内に誘発されたDNA二本鎖切断(DSB)をγH2AXを指標に検出した。その結果、①(C)への照射によって、放射線による直接的なDSB誘発は無いことが示唆された。②また、照射16時間後以降に残存するγ-H2AX量は、(N)にのみへの照射に比べて(N+C)の方が低く観察されたことから、細胞質損傷がDSB修復を促進した起因であると考えられた。③また、(C)にのみ照射すると、照射4時間後におけるγ-H2AX量は線量依存的に増加した。このことから、細胞質損傷がトリガーとなり間接的にγ-H2AX誘発することを示唆した。①-③は、J Radiat Cancer Resに発表した。さらに、細胞質損傷に対する細胞応答経路についても研究を進めた。④(C)照射によって、酸化ストレス応答経路に関わる転写因子NRF2の活性化とその標的遺伝子であるHO-1、NQO-1が発現することから、放射線の直接的なDNA損傷誘発が無くともNRF2が活性化されること実証した。⑤さらに、DSB修復に関わるXRCC4とRAD51の発現の上昇を確認した。⑥そして、⑤⑥はミトコンドリア特異的抗酸化物質によって抑制された。NRF2とDSB修復経路の関連性ついては、さらに検討が必要である。しかし、本課題において、細胞質損傷が防御的な細胞応答のトリガーとして働いていることを明らかにしたと考える。⑤‐⑦については、Cancer Sciに発表した。
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Cancer Science
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