現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標である、クローン病や潰瘍性大腸炎などの難治性炎症性腸疾患に対して新しい核酸治療剤を開発するという課題は、スーパーアパタイトとmiR-29a ないしはmiR-29bを組み合わせることで概ね達成された。定量PCRでは、外因性に投与された人工核酸がDSSで惹起された炎症腸管に送達されていることが証明された。炎症腸管では様々な炎症性メディエーター(TNFalpha、IL6, IL-12, IL-23, IL-10など)が作用していることが想定される。しかし、炎症が進んだ状態でこれらの分子を検出しようとしても、すでに焼野原となっており痕跡しか捉えることができなかった。DSSを投与して初期の段階でこれらサイトカインの変化を調べるように、腸管サンプリングの時期を再検討する必要がある。非特異核酸配列に赤色蛍光を発するAlexa647を接合し、血中投与された核酸の局在をin situで調べた。炎症部位の粘膜固有層内に散在する形で赤色蛍光は確認されたが予想よりも少なかったことから、これまでに癌でみられたように大量の核酸が病巣部に集まることで核酸の効果が発揮されるのではなく、別のメカニズム(少量でかなりの効果を発揮させるメカニズム)の存在が示唆された。マウスに全身投与した場合の抗炎症効果は極めて大きく、これらのギャップを埋める作業仮説と実証が必要である。このように未だ不明点はあるものの、miR-29bだけでなく、miR-29aもスーパーアパタイトに搭載することで炎症性腸疾患の予防に利用できることが分かり重要な成果があったと考えられる。以上から、おおむね順調に進展していると考えられる。
|