研究課題
本学下部消化管外科で手術により切除された患者大腸癌組織40例を高度免疫不全マウスに皮下および同所に移植した。40例中13例で同所移植により継代可能なPDXモデルの樹立が成功した。13例中8例のPDXマウスで肝臓および肺への自発的な転移が観察された。患者大腸癌とPDXにおける大腸癌組織は形態的に極めて類似していた。免疫組織染色による解析において、多くの大腸癌細胞はE-cadherin強陽性の上皮系の表現型を呈していた。一方、E-cadherinlowZEB1highの上皮系と間葉系の両方の表現型(中間型上皮間葉移行)を持った上皮系/間葉系タイプの癌細胞も検出された。PDXマウスの末梢血中に上皮系/間葉系の表現型を呈した大腸癌細胞集合体が検出された。v単一癌細胞より癌細胞集合体がより顕著に転移形成に寄与していることをPDXマウスを用いた数理モデル解析にて明らかにした。ヒト大腸癌細胞オルガノイドを免疫不全マウスの脾臓に注入後の肝臓に形成される転移を調査した。ZEB1陽性癌細胞が転移巣に生着し、コロニーを形成する過程で、ZEB1の発現レベルは徐々に低下し、上皮系の性質の癌細胞に変化することが確認された。この結果は、転移巣では間葉上皮移行を介して癌細胞が転移コロニーの形成能を促進していることを示唆した。E-cadherinあるいはZEB1のshRNAによる発現抑制が、ヒト大腸癌細胞オルガノイドの転移形成能を有意に抑制したことより、上皮系および上皮系/間葉系の性質が患者大腸癌細胞集団の転移形成能に必須であることが明らかになった。以上の研究結果より、患者大腸癌は単一細胞ではなく、癌細胞集合体を形成することにより効率的に転移を形成することができる。そして、上皮系および上皮系/間葉系の性質が大腸癌細胞集合体が遠隔臓器に転移を形成するために必須であることが示唆された。
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International Journal of Cancer,
巻: 146 ページ: 2547-2562
10.1002/ijc.32672