研究課題
本研究は、水素ガス吸引によって虚血再灌流障害が複合的に軽減される分子機構を総合的に解明することである。そのためには、水素ガス吸入によって、病態が改善させる事を臨床試験で確認する必要がある。本年度は、臨床試験の結果をまとめることに力を注いだ。西島病院と共同研究で、脳梗塞患者に水素ガスを吸引させて、その効果を調べた。水素ガスを吸入させた患者を50人、対象を50人とした。血液検査では、水素によって変動するパラメーターはなく、少なくとも副作用はないことが明らかにされた。MRIの効果、NIHSS(NIHによる脳卒中重症 度評価スケール)、リハビリテーションの効果を水素ガス吸入効果の指標とした。いずれの指標でも水素ガスを吸入させた患者グループでは有意に改善効果を示し、水素ガスの吸入効果があることが臨床試験で明らかにされた。水素ガスが将来的に、医薬品、医療器具の保険適用として認可されるには、臨床効果のみならず、分子メカニズムの解明が必要である。水素の虚血再灌流障害への複合的作用のメカニズムを明らかにする事で、その基盤を構築できる。メカニズムについては、脂質フリーラジカル連鎖反応に介入し、脂質メディエーターを改変し、細胞内シグナル伝達機構を制御して、転写因子NFATの活性を低下させることを明らかにした。NFATは、炎症性サイトカインの転写因子だけでなく、エンドセリンやCOX-IIの遺伝子など多数の遺伝子を転写するので、NFATの転写抑制によって、水素の多様な複合的効果が導かれる可能性を示唆した。
2: おおむね順調に進展している
臨床試験と基礎研究の双方で、大きな進歩が見られた。臨床試験では、虚血再灌流障害の代表的疾患である脳梗塞患者で、水素ガス吸入効果が認められ、論文を発表の予定である。基礎研究では、水素ガスが間接的に転写因子NFATの活性低下を引き起こす事を明らかにした。この転写因子に注目する事によって、水素の多彩な機能を説明しうる。
臨床試験の結果を詳細に検討したい。また、基礎研究としても転写因子NFATの役割に注目したい。さらに、運度によって虚血状態が引き起こされるので、水素の効果として、運動への効果も注目したい。最大酸素摂取量を測定する場合には、虚血状態になる。その最大酸素摂取量をボランティアに対して、測定することによって、水素の多彩な効果を明らかにする。
初年度は、臨床試験を中心に研究をすすめたので、基礎研究としては、予定よりも少ない金額でまかなうことができました。二年度目は、所属が移動するので、実験に使う費用が多めにかかることが予想されます。そのため、二年度へ使用できる金額を移しました。
新しい所属の実験室で研究を進める事になるので、実験に必要な培養関連器具代、細胞培養試薬や一般試薬代が初年度よりも多く必要となります。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 9件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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