研究課題/領域番号 |
16K15601
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
研究代表者 |
笹田 哲朗 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), がんワクチンセンター, 部長 (70293967)
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研究分担者 |
大竹 淳矢 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, 技師・研究員 (10758915)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | がん免疫療法 / 腫瘍浸潤免疫細胞 / ケモカイン / サイトカイン / 異所性リンパ様組織 |
研究実績の概要 |
マウスの移植腫瘍モデルを用いて、ケモカインCCL21およびCXCL13の強制発現の腫瘍増殖、生存期間、腫瘍局所での免疫細胞浸潤への影響を検討し、以下の結果を得た。 1)マウス腫瘍細胞株B16-F10および4T1にCCL21あるいはCXCL13を遺伝子導入した強制発現株(CCL21発現株、CXCL13発現株)およびコントロール株(空ベクターを遺伝子導入した細胞株)を樹立した。コントロール株、CCL21発現株、CXCL13発現株、両者の混合(CCL21発現株+CXCL13発現株)をマウス皮下に移植し、腫瘍増殖、生存期間、腫瘍局所での免疫細胞浸潤への影響を検討した。2)CCL21発現株、CXCL13発現株ではコントロール株と比較して、腫瘍増殖速度が有意に低下した。ただし、CCL21発現株とCXCL13発現株との混合(CCL21発現株+CXCL13発現株)では、CCL21発現株単独あるいはCXCL13発現株単独と比較して腫瘍増殖速度に差を認めなかった。3)CCL21発現株、CXCL13発現株ではコントロール株と比較して、生存期間が有意に延長した。ただし、CCL21発現株とCXCL13発現株との混合(CCL21発現株+CXCL13発現株)では、CCL21発現株単独あるいはCXCL13発現株単独と比較して生存期間に差を認めなかった。4)摘出した腫瘍組織をホルマリン固定したのち、免疫組織染色(抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD20抗体)によりT細胞、B細胞の浸潤を調べた。CCL21発現株、CXCL13発現株ではコントロール株と比較して、CD8陽性リンパ球の浸潤が増加していた。ただし、異所性リンパ様組織と思われるリンパ球の集積は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの移植腫瘍モデルを用いて、当初計画した通りケモカイン(CCL21およびCXCL13)強制発現の腫瘍増殖、生存期間、免疫細胞浸潤への影響を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
1)これまでの検討ではケモカインCCL21およびCXCL13の強制発現により、腫瘍局所への免疫細胞(リンパ球)浸潤を誘導できることが判明したが、異所性リンパ様組織の誘導には至らなかった。従って、マウスの移植腫瘍モデル(B16-F10, 4T1)を用いて、lymphotoxin-alphaの強制発現およびケモカインCCL21・CXCL13強制発現との組み合わせが異所性リンパ様組織を誘導するかどうかを検討する。 2)マウスの移植腫瘍モデル(B16-F10, 4T1)を用いて、サイトカイン・ケモカイン強制発現とImmune checkpoint阻害抗体 [抗マウスCTLA-4抗体(clone 9H10)あるいは抗マウスPD-1抗体(clone 10F.9G2)]やペプチドワクチンの併用が、移植腫瘍の増殖、生存期間、免疫細胞浸潤(異所性リンパ様組織誘導)に影響するかどうかを検討する。 3)上記解析にて異所性リンパ様組織誘導に関与するがん微小環境の特性(サイトカイン・ケモカインなど免疫関連分子との関連)が明らかとなった場合には、ヒト固形がんの腫瘍組織においても同様のがん微小環境の特性が観察できるかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた情報交換のための学会出席を中止したために、予算に計上した旅費の一部を使用しなかった。さらに、細胞培養用試薬など消耗品の使用量が予定より少なかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、消耗品費として使用する予定である。
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