研究実績の概要 |
予定帝王切開症例の胎盤組織より、羊膜幹細胞(ASC), 間葉系幹細胞(MSC), 血管内皮前駆細胞(EPC), 造血幹細胞(HSC)の単離を行った。これらの細胞を用いて、機能的な肝オルガノイドの作成を行った。まず、クラレが開発した特殊な3Dパターンプレートを用いてASCを培養し、肝分化を評価した。3D培養によって長期培養が可能となり、肝遺伝子発現の上昇が誘導されることと、肝分化誘導因子によって分化が促進されることが確認された。更に、MSC、EPCとの共培養でオルガノイドを作成すると、それぞれの細胞は局在を持った立体構造を構築した。また、ICG(インドシアニングリーン)の取り込み・排泄や、グリコーゲンの貯蔵といった肝機能も獲得した。 Vivoにおいては、重症免疫不全・肝障害ラット(FRGラット)を利用して、肝細胞移植実験系を確立した。正常ラット由来の肝細胞を用いて、FRGラットへの肝細胞移植を行い、高い生着率を確認した。また、ヒト由来の肝細胞を用いた幹細胞移植においても肝細胞が生着し、機能することを確認した。ラットへのヒト肝細胞移植モデルは今までに報告がなく、ヒト化肝臓ラット作成の基盤となるものである。 更に、FRGラットに対して、ヒト造血幹細胞移植を行い、ヒトの造血の生着に関しても評価を行った。FRGラットにおいて、マクロファージがヒト血球細胞拒絶に重要な役割を果たすこと、クロドロン酸リポソームと放射線照射の併用による高度なマクロファージの除去によって、ヒト造血幹細胞が、限定的ではあるものの生着することを確認した。造血幹細胞移植は異種拒絶が顕著にでる移植モデルであり、マクロファージの拒絶メカニズム解明は、ヒト化肝臓ラットモデルにも応用が可能と考えられる。
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