研究課題
研究代表者らは膵癌幹細胞の糖鎖発現解析の結果、膵癌細胞には特異的なフコシル化糖鎖(H-type1/3/4)が発現していることを同定し、更にその糖鎖構造に特異的に反応するrBC2レクチンを同定した(特許申請済)。昨年度は、rBC2-PE38(緑膿菌外毒素)を本実験に使用するのに安定的に供給できるシステムを構築することに成功した。次に6種類のヒト膵癌細胞株に対するrBC2の反応性を調べ、同じ膵癌細胞株でも臨床膵癌に近い組織形態をマウス腫瘍で再現する細胞株で強い反応性が確認した。さらに、膵臓がんの手術検体を使用し、約70検体の臨床膵癌の切片へのrBC2の反応性を免疫組織学的に確認した。すなわち、膵癌上のフコシル化糖鎖(H-type1/3/4)を標的とする、rBC2レクチンを薬剤キャリアとして利用する新規治療法が十分可能であるというエビデンスを得た。In vitroでのIC50は1.04fMolと従来の抗体融合薬に比べ1000倍以上強力な殺細胞効果であった。本年度は、in vivoでのrBC2-PE38の抗腫瘍効果、毒性について検討した。膵癌細胞株をマウス皮下に移植した Cell Xenograft モデルで局所投与により、投与量依存的な抗腫瘍効果を認めた。また、腹腔内に膵癌細胞株をし播種させた腹膜播種モデルを作成し、rBC2-PE38を腹腔投与した所、有意に播種個数を減少し、生存も優位に改善した。さらに、rBC2-PE38の経静脈的に血中投与したモデルにおいても、マウスの生存を有意に改善することに成功した(生食群 MST:62 日、腹腔投与群: 105 日 (P < 0.0001)、血中投与群:90 日(P < 0.0001))。レクチンは血液凝集活性が懸念されるが、本レクチン単独ではヒト赤血球 において血液凝集活性がないことも確認し、マウスに安全に投与する事が出来た。
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