研究課題/領域番号 |
16K15607
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
高野 重紹 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (20436380)
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研究分担者 |
佐藤 守 千葉大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (20401002)
吉富 秀幸 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (60375631)
宮崎 勝 国際医療福祉大学, 大学病院, 教授 (70166156)
酒井 望 千葉大学, 医学部附属病院, その他 (70436385)
賀川 真吾 千葉大学, 医学部附属病院, その他 (90507302)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 膵癌 / Annexin II / Tenascin C / 癌細胞ー間質相互作用 / 浸潤 / 転移 |
研究実績の概要 |
膵癌において膵癌細胞に発現するAnnexin II (ANX2)と、間質に発現するTenascin C (TNC)の相互作用が、膵癌進展に及ぼす役割について細胞実験による機能解析と臨床検体を用いて検討する。 1) マウス膵前癌細胞株、マウスおよびヒト膵癌細胞株を用い、特異的siRNAによるANX2 knockdownと合成TNCを添加することにより、ANX2とTNCの相互作用について評価した。ANX2とTNCの相互作用は、マウス膵前癌細胞株ではWestern blotでE-cadherin発現減弱を誘導し、上皮系から間葉系への移行(EMT)を促した。 2) 次に、我々が開発した3D cell culture systemを用い、siRNAによるANX2発現抑制が膵癌細胞に及ぼす形態学的変化を起こすかを検討した。ANX2とTNCの相互作用は3D細胞培養で間葉系への形態変化を促進した。また機能解析としては、invasion assayではANX2とTNCの相互作用により浸潤能を促進し、pancreatospereformation assayではANX2 knockdownによりsphere能の低下、TNC添加によりsphere能の増強がそれぞれ認められた。最後にAnoikis assayではANX2とTNCの相互作用によりanoikis耐性を促進した。 3) 膵癌切除標本のANX2とTNCの免疫染色では、ANX2/TNC高発現はリンパ節転移、遠隔転移、Stage、治癒切除術後の遠隔転移再発と有意な相関を認めた。 膵癌進展においてANX2と間質TNCが、癌の浸潤・転移に重要な上皮間葉系移行の促進、浸潤能、自己複製能、アノイキス耐性を調節している可能性を示し、ANX2-TNC axisが膵癌進展を抑える治療標的となりうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の実績としては、ANX2とTNCの相互作用にて、invasion assayでは浸潤能を促進し、sphere formation assayでは自己複製能の調整にそれぞれが関わり、さらにAnoikis assayではAnoikis耐性を促進した。膵癌切除標本のANX2とTNCの免疫染色では、ANX2/TNC高発現はリンパ節転移、遠隔転移、Stage、治癒切除術後の遠隔転移再発と相関を明らかとした。昨年度の進捗状況としては当初の予定通りに進行した考える。 外部への情報、成果の発信については、昨年度はがん転移学会をはじめ、学会発表を行い、論文については第1報をInternational Journal of Molecular Medicineに投稿し、acceptされた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、研究計画をさらに発展させていく予定である。今後の臨床応用に向け、治療開発の足がかりとなるような研究(ANX2の膵癌バイオマーカーとしての役割)を促進させていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度、平成29年度を合わせた未使用額が4335円の状態となっている。 未使用額が生じた理由としては、当初予想されていた実験に使用する消耗品の購入額が若干少なかったことが考えられる。(当初予定していたfibroblastとcancer cellとの共培養実験を行わなかった)。 この金額を平成30年度の請求額と合わせて使用させて頂く計画として、物品費:具体的には細胞培養に必要な培養液、および蛋白発現解析に必要な消耗品を購入する予定である。
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