研究課題
本研究は、ウイルスゲノム中に癌特異的抗原を発現するように遺伝子改変した腫瘍溶解性ウイルスHF10とウイルスが産生する癌抗原を認識するようにTCR遺伝子改変したT細胞の組み合わせによる新規治療法の開発を目的としている。HF10ゲノムのUL43遺伝子はフレームシフト変異のため機能していないことから、この遺伝子座に癌抗原遺伝子を導入することを計画した。CMVプロモーターにより癌抗原遺伝子発現を制御し、IRESを介してZsGreen1も発現するようにした外来遺伝子カセットの両端にUL43遺伝子と同じ塩基配列を配したプラスミドを構築した。このプラスミドをHF10ゲノムと共にVero細胞にトランスフェクションし、相同組換えにより外来遺伝子をUL43遺伝子座に組み込む方法を用いた。これによりZsGreen1のみを発現するHF10の構築を試みたが、相同組み換えの効率の低さが問題となった。そこで、相同組み換え効率の向上のためにCRISPR/Cas9ゲノム編集技術の有用性を検討した。ガイドRNAとCas9タンパク質のリボ核タンパク質複合体(RNP complex)を用いてIn vitroでHF10ゲノムの切断を行い、PCRによりUL43遺伝子を検出したところ、UL43遺伝子を確かに切断する事が確認された。また、RNP complexを作用させたHF10ゲノムをVero細胞にトランスフェクションしてもウイルスの産生が見られない事を確認した。このことから、CRISPR/Cas9ゲノム編集が相同組み換えの向上と遺伝子改変ウイルスの純化に非常に適した技術であることが分かった。今後は、この技術を用いて癌抗原遺伝子導入HF10の開発を進める。さらに、癌抗原特異的なTCR遺伝子改変T細胞を作製し、癌抗原遺伝子導入HF10の抗腫瘍効果の検討、さらに抗原特異的TCR遺伝子改変T細胞との併用効果を検討する。
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Front. Oncol.
巻: 7 ページ: 149
10.2147/OV.S127179
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/intlexch/cancerimmuno/www/index.html