研究実績の概要 |
本研究は、癌特異的に分泌されるGlypican-1陽性エクソソームに包埋された遺伝子情報を解析することで、非侵襲的なLiquid biopsyによる大腸癌患者の診断から治療にわたる戦略が構築可能か検証することである。体細胞のすべてがエクソソームを放出するために、癌細胞由来のエクソソームを区別することは困難である。そこでまず血清およびエクソソームmiRNAの早期診断マーカーとしての意義を比較検討した。正常大腸粘膜、大腸腺腫、大腸癌組織においてmiRNAs発現をqPCRで測定し、健常者・大腸腺腫患者の血清およびエクソソームmiRNAs発現の診断能を比較検討した。その結果大腸腺腫患者で血清 miR-21,29a,92a、エクソソームmiR-21,29aが有意な発現上昇を認めた。またエキソソームmiRNAと比較し、血清miR-21,29a,92aは腺腫径10mm以上の進行腺腫患者検出に有用だった。つまり血清miR-21,29a,92aは大腸腺腫の有用な診断マーカーとなり得る可能性が示唆された。 この結果より、診断の為のLiquid biopsyを臨床応用するには大腸癌特異的エクソソームを分離することが重要であることを報告した。本年度は、消化器癌腫特異的エクソソームマーカー(食道癌、胃癌、大腸癌)を同定するために、各癌腫細胞株5種類ずつとそれぞれの臓器由来の正常粘膜細胞株の培養上清からエキソソームの抽出をおこない、これを網羅的蛋白解析を施行した。その結果、同定された蛋白群のなかから公共データベースを用いて解析を行うと、ROC解析でAUC0.9以上で癌組織特異的に発現増加を示す蛋白群6つの同定に成功した。現在、それらを用いて、非侵襲的診断マーカーとしての有用性の確認作業をおこなっている。
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