研究課題
膵臓癌間質に存在する線維芽細胞である膵星細胞の活性化にオートファジーが関与していることを報告した。本研究では、膵星細胞の活性化とオートファジーとの関連をさらに追究するとともに、星細胞の抑制に着目した独自のスクリーニング系を用いた化合物ライブラリーからのスクリーニングにより新規オートファジー抑制剤となる創薬シーズを検索し、検索された化合物の膵癌や膵星細胞に対する生物学的動態の評価を行い、最終的に膵癌を含めた新規抗がん剤を開発することを目的とする。本年度は実際にオートファジー抑制薬の探索を行った。東京大学創薬オープンイノベーションセンターが保有する化合物ライブラリーを利用し、膵星細胞抑制剤の探索を行ったところ、既承認薬の網羅的探索で膵星細胞を休眠状態に誘導する可能性のある化合物(シード化合物)を152種類同定した。この中で脂肪滴の発現強度の最も高い複数の化合物に対して、再評価を行った。その結果候補とされるシード化合物が星細胞の活性化を抑制することを同定した。さらに、スクリーニング時(10μM)よりも低濃度(100nM)でも星細胞の活性化が抑制され、さらにLC3-II発現が抑制されることを確認した。また、化合物投与後の星細胞の増殖能の評価を行い、濃度依存性に膵星細胞の増殖が阻害されることを確認した。さらにマウスXenograftモデルにおいても膵星細胞のオートファジー抑制によって、腫瘍径及び肝転移・腹膜播種数の低下がみられた。これらの研究成果は膵星細胞の活性化とオートファジーとの関連を強く示唆するものであり、膵星細胞における新規オートファジー抑制剤の開発が期待される結果であった。
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Pancreatology
巻: 17 ページ: 990~996
10.1016/j.pan.2017.08.009