研究課題/領域番号 |
16K15622
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
後藤 信治 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (50186889)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | CD133 / グルコース飢餓 / 解糖系 / 酵素 |
研究実績の概要 |
がん幹細胞マーカーの一つであるCD133が発現する大腸がん細胞が、グルコース飢餓状態でも長時間生存することを見出したことにより、がん幹細胞が持つグルコース飢餓に耐え得る特有の代謝特性が、がんの根治的治療法の標的となると着想した。その治療法を開発するために、本研究では、まず、CD133陽・陰性大腸がん細胞の代謝産物をメタボロミクスにより網羅的に解析することで、グルコース飢餓状態での細胞生存に関与する因子を明らかにし、がん幹細胞が持つ栄養飢餓耐性機構を探索することを目的とした。 28年度は、CD133陽性細胞(CD44+/CD133+)と陰性細胞(CD44+/CD133-)を通常濃度、或いは低濃度のグルコースを含む培地で培養し、グルコースが細胞内でどのように代謝されていくのか、代謝産物のパスウェイ解析を行い、グルコース飢餓状態への耐性機構に関与する可能性のある因子の解析を試みた。その結果、、CD133陰性細胞と比較して、CD133陽性細胞では、解糖系の3-フォスホグリセリン酸から2-フォスホグリセリン酸への代謝が抑制されている可能性が示唆された。この代謝を触媒する酵素の活性が抑制されることにより、グルコース代謝がペントースリン酸回路へ迂回し、ヌクレオチドやNADPHの合成が優先される可能性があると考えられたが、その他、複数の代謝段階においても、CD133陽性細胞と陰性細胞で有意な相違が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
解糖系の3-フォスホグリセリン酸から2-フォスホグリセリン酸への代謝以外の複数の代謝においても、CD133陽性細胞と陰性細胞で有意な相違が観察されたことで、グルコース飢餓耐性機構の鍵となる因子の絞り込みに予定外の時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降は、候補となった複数の因子の活性を測定すると共に、発現量やリン酸化、ユビキチン化を免疫沈降法とイムノブロット法で解析する。これらの解析から鍵となる重要な因子を同定し、その活性の制御状態を明らかにする。さらに、RNAi法により、特定した因子に対するsiRNAをCD133陽性細胞或いは陰性細胞に導入し、グルコース飢餓状態への適応がどのように変化するか観察する。グルコース飢餓状態に適応するか否かは、評価する細胞をCD133陰性細胞が細胞死を起こす条件で培養し、細胞形態の変化を光学顕微鏡下で観察し、細胞生存率をMTT assay法とLDH assay法で評価する。DNA合成能は、フローサイトメーターを使用して、BrdU取込み能試験で評価する。その後、同定した適応機構の鍵となる因子をゲノム編集技術によって改変し、CD133陽性細胞のグルコース飢餓状態への耐性を打破することができるか否かin vitroで検討した上で、ゲノム編集を施したCD133陽性細胞をマウスに移植し、腫瘍を形成できるか否か検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来、28年度に予定していた、グルコース飢餓耐性機構の鍵となる候補の因子の活性測定、発現量やリン酸化、ユビキチン化の解析が29年度にずれ込んだことがその理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に実施予定である、因子の活性測定に使用すると共に、発現量、リン酸化、ユビキチン化を免疫沈降法とイムノブロット法で解析する予定であるので、これらの解析のために使用する。さらに、RNAi法により、特定した因子に対するsiRNAをCD133陽性細胞或いは陰性細胞に導入し、グルコース飢餓状態への適応がどのように変化するか観察するので、siRNAの購入に使用する。
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