研究実績の概要 |
I型糖尿病の治療において、インスリン注射や膵島移植が広く行われているが、患者負担が大きいことやドナー不足・移植による拒絶応答など全ての患者に満足のいく治療を提供できないのが現状である。最近、幹細胞から膵β細胞を作る新たな再生医療アプローチ法が期待されており、ヒトiPS細胞やES細胞等の幹細胞から膵β細胞への最新誘導プロトコ-ルが昨年報告され(Melton et al, 2014, Kiefer et al, 2014)、糖尿病の再生医療の実現に向け見通しが立ってきたといえる。しかしながら、これらのアプローチ法は分化誘導の効率や腫瘍化コントロールの課題が残されている。 本研究の目的は、直接変換によって高効率で体細胞から膵島様細胞の作製方法を確立すること、作製した膵島様細胞を免疫不全糖尿病モデルマウスに移植し、血糖改善できることを示し、直接変換のしくみを明らかにすることを目的としている。 申請者らは、マウス胎児繊維芽細胞(MEF)等の体細胞を用いたダイレクトリプログラミングによる膵β細胞の作製手法は、僅か2週間で約80%の高効率でインスリン産生細胞の作製を再現できることが示された。さらにグルコース応用によるインスリン分泌が誘導されること、またこれらの細胞を糖尿病モデルマウスに移植した結果、血糖の改善効果が認められた。以上より、従来のiPS/ES細胞を用いた手法に比べて、約半分の期間で細胞が作製できることから、将来的に膵島様細胞を提供することによって、I型糖尿病患者が必要とする「根治治療を実現」に繋がることが期待される。
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