研究実績の概要 |
本研究では、大腸がん転移症例の原発巣と転移巣組織のプロテオーム解析から新しい転移再発マーカー候補を同定し、血中エクソソームを用いた転移再発早期診断法を開発することを目的とした。 平成28年度は、大腸がん組織の原発巣および転移巣の膜画分での定量プロテオーム解析を行い、転移再発マーカーの探索を行った。同一患者の原発巣/転移巣12組24検体の膜画分を調製し、TMT10plexによる定量プロテオーム解析により4967タンパク質と、原発/転移間で発現量に差のある182種類の膜タンパク質を同定した。 平成29年度は、それらのタンパク質が血中のエクソソームで検出・定量可能かどうか、高感度定量用質量分析計を用いたSRM/MRM法を用いて検討した。過去に大腸がんのバイオマーカーとして報告されている723種類のタンパク質についても、合わせて血中のエクソソームで検出・定量可能かどうか検討した。計約160症例の血清(健常人約50例、早期大腸がん患者約80例、進行大腸がん患者約30例)を用いて解析した結果、最終的に34ペプチド(22タンパク質)が健常人に比べ、大腸がん患者で有意に増加していた。ROC解析を行ったところ、13ペプチド(9タンパク質)が健常人に比し早期大腸がんで、2ペプチド(2タンパク質)が早期大腸がんに比し進行大腸がんでAUC>0.8であった。これらのペプチドは、大腸がんの早期診断マーカーおよび転移再発マーカーとして有望であると考えられた(Shiromizu et al, Sci Rep 7, 12782, 2017)。
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