研究課題/領域番号 |
16K15629
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
海野 直樹 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (20291958)
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研究分担者 |
犬塚 和徳 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (00397415)
山本 尚人 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (80402262) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大動脈瘤 / エンドリーク / MRI / 合併症 / 血流解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術(EVAR:Endovascular Repair of Aortic Aneurysm)後に発生するType II エンドリークに対して、長期に渡りエンドリークが残存し瘤径の拡大に至る否かを非侵襲的に予測し、早期にエンドリーク治療に介入すべきか否かを判断する方法を探索する。方法は、新たに開発されたMRIの撮影テクニックである4D- (four-dimensional)-flowとその分析ソフトウェアを用いて、動脈瘤内に漏出するエンドリークの血行動態(血流の方向(vector)、血流速度、単位時間あたり血流量)を計測する。これらのデータの推移をEVAR 術後follow-upで計測、造影CTデータから計測した動脈瘤体積絶対値の推移(術前値からの拡張あるいは縮小)と照らし合わせ、動脈瘤増大をもたらすパラメーターを解析することを最終目標としている。平成28年度は4D-flow MRIによる解析技術を確立し、Type II エンドリークは次の2つのパターンに分類できることが判明した。ひとつは瘤壁から分岐する枝動脈単独の血管からto-and-floの形で瘤内に血流が持続するものと、もうひとつは、複数の分枝動脈間での一方向への交通が持続しているものであることが判明した。これによりエンドリークの原因となっている大動脈瘤分枝1本ずつについてその血流方向、血流速度を解析することが可能となった。我々は前者をType IIa、後者をType IIbエンドリークと命名した。平成29年度はこの結果から、EVAR術後7日目の4D-flow MRI解析を行い、すべての分枝動脈の血流解析と瘤ごとの分枝血流延べ総和データを計測するとともに、そのデータから手術1年後のType IIエンドリークの遷延との関係ならびに瘤径増大との関連を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
EVAR術後の4D-flow MRIの解析データの蓄積と患者を1年間にわたりfollow upした結果から、本研究の目標とする予後予測 パラメーターの探索にめどを付けることができた。すなわち、Type II エンドリークを遷延させる動脈瘤分枝血管の血流量はエンドリーク遷延群では収束群と比較して有意に大きく、また瘤が有する分枝動脈の総血流量も増大群では非増大群と比較して有意に大きいことが判明した。ROC曲線による解析から、術後の増大に対する分枝動脈総血流量は3750 mm3/min, であり感度、特異度はそれぞれ 85.7%、 76.2%と判明した。ここまでの結果を Jounal of Vascular Surgery誌に現在投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
29年度の成果から、EVAR手術後7日目のMRI 4D-flow 解析結果から、1年後の瘤径拡大の有無の予測がある程度可能となった。この成果は今後、分枝動脈塞栓術などで早期に介入すべきType II エンドリーク症例と、そのまま経過観察にとどめることが可能なType II エンドリーク症例とを判別可能になると言うことを意味する。一方、手術7日目のMRI 4D-flow 解析でType II エンドリークの予後が予測可能になるのであれば、EVAR術前にMRI 4D-flow 解析結果を行うことで、術後Type II エンドリークの発生、しいてはその遷延瘤増大も予測可能となるかもしれないと考え、平成30年度はEVAR術前にMRI 4D-flow解析を行い、1年後の予後とを照らし合わせて、Type II エンドリークの予測が可能か否かを検討する事にしている。
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