研究課題
マウス腹部大動脈へ人工血管埋植後8週目には、血管内腔側に石灰化を来すことが既に我々の予備的検討にてわかっており、それらグラフトを用いて以下の点について重点的に研究した。1.石灰化・新生内膜肥厚に関するメカニズム解明。(1)組織解析(HE染色・EVG染色・von Kossa染色等に加えて、免疫染色)。(2)マイクロアレイ解析を用いた新生内膜・石灰化に関わる遺伝子の網羅解析。(3)関与候補遺伝子を用いてA)遺伝子改変マウスの作製 B)人サンプルでの発現解析。2.石灰化・内膜抑制機序を組み込んだ次世代人工血管への応用技術の確立の検討。を今回の萌芽研究での目標として研究を行ってきた。結果、腹部大動脈に人工血管を埋植したマウス49匹中39匹から、移植後2ヵ月後に開存し得た人工血管グラフトを回収した。X線撮影を行い、39サンプル中14サンプルで石灰化が認められた。石灰化群と非石灰化群に分け、それぞれからRNA抽出を行い、アジレント社製のマウス遺伝子発現マイクロアレイを用いて、遺伝子発現解析を行った。Fold Changeが2以上の遺伝子のなかから主要なものをピックアップし、さらにリアルタイムPCRを行い、ΔΔCT法を用いて定量した。リアルタイムPCRを行った22の遺伝子のうち、4つの遺伝子(collagen X、osx、win3a、ankrd2)で、統計学的有意差は認められなかったものの非石灰化群を1としたときの石灰化群のRelative Expressionが2以上であり、動脈グラフト移植後の石灰化発生に何らかの関連がある可能性が推察された。
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