我々は、今までに接着性の細胞の凝集体であるスフェロイドを任意の形態に積層し、3次元の組織構造体を作製する技術として「バイオ3Dプリンタ」を開発した。本装置を用いて、今までに血管、軟骨、肝臓組織の構造体を作製している。本研究では、ドーム型心筋組織の作製及び最適な培養環境を検討した。 平成28年度はヒト心筋スフェロイドの作製及びドーム状のヒト心筋構造体の作製に取り組んだ。その結果、剣山から構造体を回収する際に形態を保持することが困難であった。更に、剣山から回収した心筋構造体は静置培養環境下では1日目で縮んでしまった。そこで平成29年度は剣山から構造体を回収する時に、構造体の形態を保持したまま回収する機構と回収後に形態を保持する為の培養装置の作製、それを用いたドーム型心筋構造体の培養に取り組んだ。我々は形態を保持する手法を最適化する為に、ヒト繊維芽細胞構造体を用いて初期検討した。その結果、ドーム状の形態を保持したまま、剣山から構造体を回収することが出来た。そして構造体の形態を保持したまま培養装置へ移行し、培養することが出来た。次にドーム型心筋構造体の作製及び、構造体の培養装置への移行を検討した。心筋構造体を作製した結果、ヒト心筋組織体は剣山から回収後、形態を保持していたが、スフェロイド同士の融合が不完全であり、自律的な拍動が著しく弱かった。理由としては剣山内全ての範囲に栄養素や酸素を供給することが困難である為、スフェロイド間の融合、心機能を保持出来なかったと考えられる。今後の展望としては、ドーム型心筋組織体を作製する為に、針の長さを調整したオリジナルの剣山の作製をすることで、ドーム型組織体全体に栄養素が供給出来るようになり、強い拍動を有する組織体を作製出来ると考えられる。
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