研究課題/領域番号 |
16K15635
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野田 雅史 東北大学, 大学病院, 講師 (70400356)
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研究分担者 |
松田 安史 東北大学, 大学病院, 助教 (00455833)
岡田 克典 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (90323104)
星川 康 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (90333814)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肺移植 / 肺保存 |
研究実績の概要 |
【背景】肺移植において現行の標準的な肺保存法は、低温の肺保存液で肺血管床を満たし、摘出肺を膨張させた状態で搬送する方法が一般的に用いられている。長時間の肺保存においては酸素消費に伴う肺胞内の酸素不足が生じ効率的な代謝がなされず、組織傷害をきたす可能性がある。この問題を解決すべく肺保存中にも持続的に換気を行える肺保存装置を作成し、ブタを対象とし実験を行なった。 【方法】ドナーブタの肺を肺保存液で灌流後摘出しdeflation群、inflation群、ventilation群の3群に分け、ドナー肺を24時間保存し、レシピエントブタへ左片肺移植を施行した。気道内酸素、二酸化炭素濃度評価のため肺保存前後の気道内ガスを、肺保存中の肺胞上皮細胞のviabilityの評価として肺保存前後のATPを測定した。左片肺移植後の肺水腫の評価として移植後左肺のwet/dry ratioを測定した。 【結果・考察】気道内のガスは、inflation群、deflation群にて酸素濃度の低下、二酸化炭素濃度の上昇を認めた。ventilation群において保存前後でATPの上昇を認め、他2群では低下を示した。左片肺移植後の左肺のwet/dry ratioは、ventilation群に低い傾向を認めた( ventilation群 : 4.68 , inflation群 : 5.35 , deflation群 : 5.71 )。肺保存中、ventilation群にて肺viabilityが維持され、肺移植による肺移植後の再灌流傷害がventilation群で最も軽微である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点では実験は概ね順調に進んでいると考えている。今後、肺動脈圧等の生理学的指標を加え、ドナー肺保存中の持続換気の有効性の検討を進めたいと考えている。一方、このブタ移植実験は摘出、移植手術という実験者の手技も影響してしている可能性もあり実験手技の安定も含め同時に行っていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後ドナー肺の効果測定を行う。ドナー肺コントロール群として、肺を灌流摘出した後、肺を虚脱させ24時間冷保存する群(deflation群)、肺を灌流して摘出した後、気道内圧を15-20mmHgに肺を膨張させた状態で24時間冷保存する群(inflation群)を設定する。これに上記①のCVLP群を加えた3群で、保存前、保存中、保存後の摘出肺の機能評価を行う。評価指標としては、wet/dry ratio、肺内(気道内)の酸素濃度および二酸化炭素濃度、病理組織標本による形態学的評価、肺内のIL-8、IL-1β、TNF-α、IL-6、MCP-1等の発現、肺内の乳酸濃度を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
中動物であるブタを用いた移植実験であったが、ブタを共同購入したことに加え、共同購入により輸送運搬費を削減できたため、使用額の残高が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度については、これらの残額をブタの輸送費用に回すことが可能であり、併せて実験動物のブタもさらに増えることが予想されているため、これらに充当する予定である。
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