研究課題
近年、肺腺癌におけるEGFR遺伝子変異やEML4-ALK fusionに対する分子標的療法が治療に欠かせないモダリティーとなってきている。その一方で、肺扁平上皮癌に対する有効な分子標的治療法は今だに確立されていない。我々は癌特異的増殖因子であるMidkineに対する特異的阻害剤:iMDKの開発を行い、当該低分子化合物がPI3Kinase/AKT を阻害し、肺癌に対し抗腫瘍効果を誘導できることを報告した(Fukazawa T et al. PLoS One. 8: e71093. 2013, Exp Cell Res. 335: 197-206. 2015)。現在、肺扁平上皮癌の多くでPIK3CA遺伝子変異やPI3Kinaseの活性化がみられることが報告されてきており、今回我々は新たにiMDKをリード化合物とする誘導体(derivatives)の合成を行い、これらの小分子化合物の抗腫瘍性を検討した。まず、我々は肺腺癌株:H460、肺大細胞癌株: H1299および肺扁平上皮癌株:H520におおけるPI3KおよびPI3Kリン酸化をImmunoblot法にて解析した。3種の細胞株においてPI3Kの発現が認められたのに対し、肺扁平上皮癌株:H520においてPI3Kは明らかなリン酸化が検出されたのに対し、肺腺癌株:H460および肺大細胞癌株: H1299では微弱であった。iMDK派生化合物の一つMDK#2はH520に投与後、PI3KおよびAKTのリン酸化を抑制し、AKT阻害効果はiMDKより優位であった。これらのことより、iMDK派生化合物からより有効な抗腫瘍効果を持つ小分子の選定が可能であることが示された。本研究において上記iMDK 派生化合物の最適化と抗腫瘍効果の解析を行うことで、肺扁平上皮癌に対する臨床試験、また新たな臨床研究への展開へと繋がる有効かつ低毒性の治療薬開発を目指す。
3: やや遅れている
病院の移転に伴い、研究時間が大幅に短縮した。そのためiMDK誘導体の肺癌細胞株を用いた薬効の解析に必要な研究費の一部が未使用となった。
平成29年度は、使用細胞種を増やし、派生化合物の抗腫瘍効果、下流シグナル解析をすすめ、動物実験を行う。
病院の移転に伴い、研究時間が大幅に短縮した。
次年度使用額は派生化合物の制癌効果および下流シグナルの検討に必要な細胞・分子生物試薬費および動物実験関連費に使用する。
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