研究課題/領域番号 |
16K15643
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
鈴木 雄治 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (90529851)
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研究分担者 |
藤井 幸彦 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40283014)
中村 亨弥 新潟大学, 研究推進機構, 助教 (70377208)
山田 謙一 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (70436773)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 正常圧水頭症 / PET / 水動態 / glymphatic system |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、特発性正常圧水頭症(iNPH)における脳内の水分子の動態をPETにて直接評価し病態生理を解明することにある。近年、髄液の産生・吸収に脳のリンパ系とも言えるVirchow Robin間隙の間質液の流れ(間質流Interstitial flow)をはじめとするGlymphatic Systemやその流れを生み出す脳髄液調節機構が報告され、それの調節機能の障害がiNPHの発生に深く関与している仮説に基づき、iNPHの病態解明を目指し新たな診断方法を確立する。 29年度では、初年度に施行した2名のiNPH患者の術後1年後のフォロースタディ及び新規に2名の患者の撮像を行った。さらに、iNPHとの比較を目的に1名の非交通性水頭症患者と8名の同年齢群の健常ボランティア(60-70際代)の撮像を行い比較検討した。初年度に測定した2名は術後の経過は安定しており、[15O}H2O-PETで測定した間質流は健常ボランティアと比較して低下しているが、術前に比し改善しその状態は1年後も維持されていた。また、本年度に新たに測定したiNPH患者も、同様に明らかに間質流の低下を認め、iNPHの安定した観測結果を認めた。今後、術後の経過を観察し臨床所見との比較を持続する。 同時に行っている、アクアポリンの分布解析に関しては、追加した患者群とボランティア群で明らかな違いを検出できていない。これは、従前術後での変化も同様で、アクアポリンPETの検出感度及び空間分解能の問題があることが示唆された。解析方法の更なる検討が求められる。 最終年度(30年度)では、さらに症例を重ねると共に、臨床経過との対応を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に引き続き、症例及び健常ボランティアにての比較検討を引き続き行っている。iNPH患者群での水の動態は、症例を重ねても明らかに低下していることが確認され、さらに術後にはその間質流は改善傾向を示した。 一方で、間質流の基と考えられているアクアポリンの評価は、様々の理由から十分な効果をあげられていない。これはアクアポリンPETの検出感度及び空間分解能の問題があることが示唆され、解析方法の検討が必要と思われる。 これらの結果から、間質流を評価することは、iNPHの病態理解につながることが示唆され、更なる臨床経過との比較検討することで病態理解が深まることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き今年度の結果も、水動態の変化がiNPHの病態と深く関連があることを示している。今後も更なる症例及び健常ボランティアの撮像を重ね、臨床経過の観察とフォローアップ撮像を続けて行く.アクアポリンに関しても解析方法をさらに検討し、病態解明につなげていくことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度に購入予定であったPET撮像時に必要な消耗品(頭頚部固定セット等)の購入納入が遅れてしまったため、次年度使用額が生じてしまった。
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