研究課題
外側視床下部にChR2をアデノ随伴ウィルスベクターを用いて注入したのち、リポーター蛋白であるGFPの分布を免疫組織化学的手法で確認したところ、視床では主に順行性に、背内側核に加えて外側手綱核の軸索終末にもGFP発現が認められた。この手法を利用し、覚醒頭部固定下における視覚弁別課題および空間作業記憶課題を訓練した5頭のラットにおいて外側視床下部からChR2を導入して、視床の背内側核/外側手綱核を80Hzのレーザー光で刺激(経路特異的光刺激)することによる課題成績の変化を行動学的に解析するとともに、視床・大脳皮質における神経活動(電場電位)の変化に関する電気生理学的解析を進めた。電気生理学的解析の結果、外側視床下部-視床背内側核/外側手綱核経路の80Hz刺激により、低周波(δ~β)帯域および高周波(γ)帯域パワーの一過性の増強とそれに続く抑制が誘導された。行動解析の結果、光刺激は視覚弁別課題の成績には有意な影響を及ぼさなかったが、空間作業記憶課題においては、左右の手がかり視覚呈示期間に光遺伝学的刺激を行うと、遅延期間の長さに関わらず成績が低下した。遅延期間の最中に光刺激を行った場合、行動学的効果は弱かった。つまり、外側視床下部-視床背内側核/外側手綱核経路の80Hz刺激は経路特異的過興奮とそれに続く抑制を誘導し、この抑制が作業記憶課題の記銘期間に生じたときに特異的に顕著な成績変化がもたらされた。このことから、視床下部過誤腫によるてんかん性脳症においては、外側視床下部-視床背内側核/外側手綱核経路の過興奮とその後の抑制により認知機能障害がもたらされるという病態メカニズムが重要であり、本研究の開発した経路特異的光賦活は視床下部過誤腫てんかんの脳回路病態を検討する動物モデルとして適切なことが示唆された。
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Scientific Reports
巻: - ページ: -
10.1038/s41598-018-26054-8
Epilepsia
巻: 58 ページ: 1556-1565