【目的】近年、バイオマーカーを測定することで疾病の診断や効率的な治療法の確立、さらに個別化医療が可能となっている。複数の他臓器がんの臨床においてバイオマーカーが同定され、実際の診断や治療に有効活用されている。しかし、難治疾患である悪性脳腫瘍に対してバイオマーカーは同定されていない。本研究は、原発性脳腫瘍の中で最も高頻度かつ高悪性度の膠芽腫の診断を迅速・簡便・確実に可能とする血液バイオマーカーの開発を目的とする。 【方法】膠芽腫血漿をショットガン測定して構築したデータベースを用いて、膠芽腫血漿14検体および健常血漿15検体のSWATH (Sequential Windowed Acquisition of all Theoretical fragment ions)法による比較定量を行った。 【結果】962種類のタンパク分子を同定し、その中で膠芽腫症例群と健常群で高い有意差を認め新規性の高い5種類の分子を抽出した。健常人と比べ膠芽腫症例において高値を示したタンパクとして、SERPINA3(alpha-1-antichymotripsin)とC9(compliment component C9)、健常人と比べ膠芽腫症例において低値を示したタンパクとしてGSN(gelsolin)、IGHA1(Ig alpha-1 chain C region)、APOA4(apolipoprotein A-IV)が抽出された。これらの候補分子はいずれもこれまでに膠芽腫血中診断マーカーとして報告されていない。 【結論】膠芽腫バイオマーカー候補分子5種類を同定した。同定された5分子についてその機能解析とマーカーとしての妥当性を検証することで、単一あるいは適切な組合せにより、感度・特異度の高いバイオマーカーセットを決定したい。
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