GBMではEJC関連因子においてmRNA量が増加していることを見いだした。この結果は、正常組織で発現が低いEJC関連因子が腫瘍では発現が高いこと、細胞分裂にEJCが寄与することから、増殖する腫瘍細胞はEJCの発現を獲得することが必要と考えられる。そこでGBM腫瘍組織および周辺部よりタンパク質を抽出し、ウエスタンブロットを行ったところ、腫瘍組織での高発現を見いだした(未発表データ)。この実験結果は、がん化にともなうEJCの活性化がGBM細胞の増殖に必須であることを強く示唆する。次に、EJC関連因子の高い発現の意義を明らかにするために免疫染色し、発現量が高い群と低い群で生存率に差があるかを検討した。46名の腫瘍組織標本について、あるEJC関連因子で染色し、発現量と予後との関係をKaplan-Meierプロットしたところ、高発現群では低発現群と比較して有意に全生存期間が短いことが明らかとなった(p=0.0081)。また、Tet-ONシステムを利用して薬剤誘導による過剰発現(OE)系を作製した。ウエスタンで発現誘導を確認後、DNAマイクロアレイによりトランスクリプトーム解析を行ない、影響を受ける遺伝子を検索したところ、多数の遺伝子の変動を検出できた。これらの遺伝子の機能をデータベースなどにより検索したところ、GBMに関連する遺伝子が多数を占めていた。この結果は、EJC関連因子がGBMに関わる遺伝子群のマスター因子であることを示唆するものと思われる。また、EJC関連因子について核内への局在についても確認を行なった。
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