研究課題
変形性関節症(以下、OA)病変の首座である軟骨の変性は、プロテオグリカン中の糖鎖構造の破壊から始まるとされている。本研究の最終ゴールは、軟骨中の糖鎖がOAの発症および早期病態において重要な機能を担っているという仮説を証明し、OA早期の病態解明と新規治療法開発のための分子基盤の構築を目指すことである。申請期間内の具体的目的は、1)ウサギ膝関節に糖鎖分解酵素を投与し、軟骨変性変化を組織学的および分子生物学的手法により評価する、2)マウス関節軟骨の器官培養系に糖鎖分解酵素を投与して1)と同様の評価を行う、最終的に3)軟骨変性およびその可逆性変化 -修復現象- が証明されたうえで、変性ならびに修復メカニズムを糖鎖生合成過程における代償機構に注目し、解明することである。高マンノース型糖鎖特異的分解酵素であるマンノシダーゼをウサギ膝関節内に投与することで組織学的にOA変化を生じさせることができた。さらに、分解酵素投与後の軟骨組織の経時的観察を行ったところ、本研究仮説である軟骨変性の可逆性変化ー自然修復現象ーが確認された。修復メカニズム解明のためのマウス軟骨を用いたin vitro変性モデル(器官培養系にマンノシダーゼを添加)において、組織学的および分子生物学的観点からも本現象をサポートする結果が得られた。現在、in vitroモデルの軟骨組織中の網羅的糖鎖構造解析であるグライコブロッティング法を行いて糖鎖関連分子の発現変化とそれに関連する糖鎖分解・合成酵素の遺伝子発現変化を追跡している。
2: おおむね順調に進展している
本研究仮説である、マンノシダーゼ投与により高マンノース型糖鎖が分解されることで軟骨変性が生じるが、糖鎖生物学的に何らかの代償機構が働き変性変化が停止もしくは修復に向かう、という仮説がほぼ証明された。おおよそ申請した計画通りに、研究は進んでおり、平成29年度は糖鎖生物学的代償機構の解明を行う予定である。
平成28年度内に、本研究の作業仮説であるマンノシダーゼ投与により高マンノース型糖鎖が分解されることで軟骨変性が生じるが、糖鎖生物学的に何らかの代償機構が働き変性変化が停止もしくは修復に向かう、という点は証明された。平成29年度はin vitroモデルを用いて、マンノシダーゼ投与後の軟骨中の糖鎖発現変化をグライコブロッティング法を用いて解析する。さらに、糖鎖関連酵素の遺伝子発現変化も追跡する。これらの結果よりターゲット糖鎖分子を同定する。最終的には、同定した糖鎖分子の軟骨変性および修復過程における機能解析を行ことで、上述したメカニズムを解明する。
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