関節リウマチは最も頻度の高い自己免疫疾患の一つであり、滑膜組織の腫瘍様増殖と成熟破骨細胞の過剰形成によって、関節の破壊が進行する特徴がある。種々の生物学的製剤の開発によって治療成績は向上しているが、骨破壊抑制や寛解達成率に関しては未だ不十分な側面もある。生物学的製剤併用の必要性も指摘されているが、免疫応答を全身性に強く抑制した場合、感染症リスク増大や癌細胞に対する免疫監視低下など、深刻な副作用も懸念される。本研究では、自己反応性T細胞の活性化を抑制して関節における慢性炎症を抑制すると同時に、滑膜線維芽細胞やTh17細胞に高発現するRANKL細胞外ドメインに高親和性に結合し、成熟破骨細胞形成を直接阻害すると共に全身暴露の軽減も図った生物学的製剤の創製を目指して検討を行った。 平成29年度は、まず、前年度に構築した生物学的製剤に関して、in vitroの薬理活性およびin vivoの血中滞留性の観点から評価を行った。最終的に、IgG1抗体のFc領域のN末端側にCTLA-4の細胞外ドメインを、C末端側に抗RANKL単鎖化抗体(scFv)を配置した融合タンパク質をin vivo薬理活性の評価に進む候補として選択した。コラーゲン関節炎マウスモデルに対して、四肢関節の腫脹が一定のレベルに達した状態から、投与を開始することで、治療効果を評価した。比較対象としては、既存のアバタセプトと同構造を有するコンストラクトを作成して用いた。その結果、新規デザインの生物学的製剤は、関節腫脹の増悪・関節軟骨の破壊・関節周囲の骨組織破壊のいずれに関しても、アバタセプト型の対照と比較して、有意な薬理活性の増強が認められた。
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