研究課題/領域番号 |
16K15655
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
野田 政樹 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (50231725)
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研究分担者 |
二藤 彰 鶴見大学, 歯学部, 教授 (00240747)
江面 陽一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (50333456)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | IRISIN / 骨芽細胞 / 骨形成 / Lgr4 |
研究実績の概要 |
本年は骨粗鬆症の病態制御に向けて新しい戦略基盤の確立のために、IRISIN と協調する副甲状腺ホルモン 受容体(PPR)のシグナルとの相互作用に基づく骨形成促進の分子機構に着目した。まずIRISINが硬組織に発現することを時系列で検討した。その結果、IRISINの硬組織における発現と その時間依存性を明らかにした。さらに硬組織におけるエピジェネティック制御研究として、ヒストンメチル化酵素G9aに注目して解析をおこないmRNAおよび 蛋白の局在を明らかにした。 PPRシグナルの骨粗鬆症に対する骨量増加のメカニズムはなお十分には明らかでないことから、骨形成のアナボリックな作用を老化の観点から検討する新しい遺伝子のLgr4の解析を行った。その結果、酸化ストレスとして用いた過酸化水素により骨芽細胞様細胞MC3T3EにおけるLgr4のmRNAのレベルが抑制されることが明らかとなった。この酸化ストレスによる骨芽細胞様細胞MC3T3EにおけるLgr4のmRNAのレベルの抑制は0.1mMで有意差はなかったが1mMでは50%以上の抑制として観察された。酸化ストレスによる骨芽細胞様細胞MC3T3EにおけるLgr4のmRNAのレベルの抑制は時間依存性であり12時間以内に観察されその後48時間まで持続していた。制御モードの検討では 酸化ストレスによる骨芽細胞様細胞MC3T3EにおけるLgr4のmRNAのレベルの抑制は転写阻害剤DRBの存在下ではなおも観察されたが、一方でたんぱく質合成阻害剤の存在下では 観察されないことから 酸化ストレスによる骨芽細胞様細胞MC3T3EにおけるLgr4のmRNAのレベルの抑制は新蛋白の合成を必要とする転写後性の制御によると推察された。従ってLgr4が骨芽細胞では酸化ストレスにより制御されこのことから骨量制御に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IRISINの硬組織における発現を解析して時系列的な側面を明らかにした。さらにエピジェネテイックな制御に関わる分子の存在を見出した。さらにPTHのアナボリック作用に関わる骨芽細胞の骨形成の制御に機能する新しい分子の Lgr4は メカニカルストレスに関連する酸化ストレスにより制御されることが初めて明らかとなった。これまでLgr4はアイスランドの国民の全ゲノム解析により骨粗鬆症と関連することが報告されているが メカニカルストレスに関連する骨形成の主体である骨芽細胞における働きは十分には明らかとされていなかった。今回、化ストレスとして用いた過酸化水素により骨芽細胞様細胞MC3T3EにおけるLgr4のmRNAのレベルが抑制されることが明らかとなった。 酸化ストレスは 老化とも関連しており、骨量のレベルがメカニカルストレスにより 維持されることが老化により効率の低下した状況では、よりマイナスの状況になることが推察されるが、酸化ストレスにより骨芽細胞様細胞MC3T3EにおけるLgr4のmRNAのレベルが抑制することは その一部を担う可能性がある。今後IRISINとの関連やPTHによる骨形成促進、アドレナリン受容体との連関においてLgr4が持つ意義を解明することにより重要な基礎的基盤を与えるものとなることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本邦ではおよそ1200万人に影響を及ぼしている骨粗鬆症は、非常に多くの患者の存在する疾患でありながら、適切な骨形成の機構はなお明らかではなくこれに必須である骨芽細胞の制御シグナルについては なお十分には 解明されていなかった。今回のIRISINの硬組織における存在並びに 骨の形成に関わる新しい分子の Lgr4が メカニカルストレスに関連する酸化ストレスにより制御されることが初めて明らかとなったことは今後の研究の上で これらの分子の重要性を示すものである。これまでLgr4はアイスランドの国民の全ゲノム解析により骨粗鬆症以外の疾患とも関連することが報告されている。現在 骨粗鬆症は 全身の虚弱性として筋肉の低下や ロコモとの関連が示唆されている。 メカニカルストレスに関連する骨形成の主体である骨芽細胞における働きは Lgr4とともに働く 接着分子などとの関連がなお十分には明らかとされていない。細胞レベルでのLgr4解析の結果に基づきさらにIRISIN,PTH,アドレナリン受容体がメカニカルストレスとLgr4や接着分子等とともに新たなメカニズムとして骨形成の新分子機構を中核に解明する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の上で消耗品を次年度で購入することが必要であったため
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品の購入に使用する(プラスチック製品、 抗体など組織化学的試薬、動物)
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