研究課題/領域番号 |
16K15661
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石黒 直樹 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (20212871)
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研究分担者 |
酒井 忠博 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (60378198)
平岩 秀樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (70566976)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Wnt/βcatenin / DKK1 / Drug repositioning |
研究実績の概要 |
変形性関節症は多くの罹患患者を持つ疾患である。治療では関節保護効果と関節症治療効果が求められる。しかし、現状では関節保護効果を臨床的に証明した薬剤は存在しない。Wntシグナルが変形性関節症、関節炎に深く関わることは既に多くの報告がある。Wntシグナルの抑制化合物の探索は関節軟骨保護効果と関節炎治療効果を併せ持つ薬物の開発に繋がる可能性がある。Wntシグナル経路の抑制作用を持つFRZB(Frizzled related protein)の発現を亢進させるVerapamilを見出した。VerapamilはラットACL損傷モデルで関節症の進行をWntシグナル抑制を介して抑制した。本化合物は既に特許が設定されていた。別のWntシグナル抑制効果を持つDkk1を標的分子として、同じくDrug repositioning 戦略を用いてDkk1発現を亢進する化合物を選定し、関節症治療薬としての可能性を検討する検討を行った。最初にWntシグナルの抑制に関わるDkk1分子の発現を亢進させる化合物をDrug repositioning戦略での一次screeningを開始した。一次screeningで候補化合物を得たが、化合物毒性の観点から、次の段階に進めるものは無かった。そこで再度範囲を拡げてscreeningを行うと共に、DKK1の発現亢進に働く物質の検討を行った。これらの化合物には相同性が見られ、その作用はclass effectsと考えられた。これら化合物にDKK1促進作用がある事は知られていない。知財確保に繋がれば、更に臨床使用に向けて検討を深める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初DKK1の発現抑制物質を求めてScreeningを行ったが、①十分な抑制効果を示すめぼしい化合物が見あたらなかった、②毒性の観点から関節症治療薬として長期に使用できない、③発現亢進物質に有望な化合物が多数存在した、等の中間的な結果から①薬剤パネルを変更してより広範囲の薬物を対象に検討する、②DKK1の発現促進物質の検討を行い、選定した化合物の骨形成効果の検討を進めることにした。当初目標の達成が困難と判断したために方向性を変化させた。発現促進物質の検討では複数の化合物を得ており、更に相同性からClass effectsと考えられる。①これらClass effectsと考えられる化合物群に対して骨形成促進効果があることを確認する、②感応部位を特定してより活性の高い物質を探索するなどを進める予定である。方向性を転換したが、研究は順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
先にも述べたように研究の方向性は変更し、DKK1発現促進物質の検討を先行させているが、抑制物質の検討も範囲を拡げて行っている。限られた研究期間内で成果を挙げるために方向性を変更させてDKK1発現促進物質の検討を開始した。有望な化合物群を見出しており、構造上の類維持点が見られることから新たな創薬targetになる可能性もある。知財関係を整理し、獲得が可能ならば新規化合物の合成展開を含めて研究を進める予定である。結果方向性の転換は余儀なくされているが、有望な化合物を見出しており、進捗は充分以上のものがある。
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