研究課題/領域番号 |
16K15666
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
尾崎 敏文 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (40294459)
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研究分担者 |
榮川 伸吾 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (40635265) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨軟部悪性腫瘍 / 免疫療法 / immunometabolism / メトホルミン |
研究実績の概要 |
マウス骨肉腫モデルにおける腫瘍内の免疫細胞解析および骨肉腫に対する抗糖尿病薬メトホルミンの効果およびその機序に関して検討した.骨肉腫に対してメトホルミンは成長抑制効果をもたらした.In vitroにおける検討では骨肉腫細胞株(K7M2neo)に対するメトホルミンの増殖抑制効果は血中濃度の500-1000倍程度必要であり,間接的な抗腫瘍効果が期待された.免疫系に着目すると,CD4およびCD8T細胞除去下においてもメトホルミンの抗腫瘍効果は維持された.またT細胞系欠損マウスにおいてもメトホルミンの抗腫瘍効果が再現された.これは軟部肉腫(MethA)とは異なる結果であり,骨肉腫における抗腫瘍免疫系が特殊であることが考えられた.メトホルミン投与群において腫瘍中の骨髄球由来抑制性細胞(myeloid-derived suppressor cells, MDSC)が減少しており,またCD206を細胞表面に高発現するM2型マクロファージが減少した.この機序としてメトホルミンの作用部位であるミトコンドリア機能に着目し,細胞中の活性酸素種(reactive oxygen spices, ROS)を計測した.メトホルミン投与により腫瘍内MDSC,マクロファージ内のROSが減少した.腫瘍内骨髄球(CD11b+細胞)では好気的解糖が低下しており,さらにエネルギー産生機構を蛍光グルコースアナログ(2-NBDG)および脂肪酸アナログ(BODIPY)を用いて検討した結果,MDSCにおけるグルコース,脂肪酸の取り込みが減少しており,エネルギー産生機構が破綻していることが推測された.骨肉腫と軟部肉腫においてT細胞の役割が変化しており,その差異が生じるメカニズムについての解析を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨肉腫における免疫機構が既存の腫瘍系と異なる機序である可能性があり,ヒト研究に至る前にマウスでの解析をさらに進めることになった.骨肉腫モデルにおける結果は論文作成中である.
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今後の研究の推進方策 |
今後,軟部肉腫におけるsyngenic modelでの免疫系の解析を計画している.また,先行研究により抗PD-1抗体の有効性が確認されている腫瘍であり,本モデルにおけるメトホルミンの相乗効果についても検討を予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の解析において、骨肉腫における免疫機構が既存の腫瘍系と異なる機序である可能性が示されたため,分担研究者と検討を重ねた結果、マウス骨肉腫モデルでの解析をさらに進めることになった.計画を変更した時期が年度末になってしまい、年度内の動物購入が出来なかったため、次年度使用額が生じた。 今年度マウス購入に使用する予定である.
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