研究課題
関節リウマチ(rheumatoid arthritis; RA)は,免疫異常により細胞間コミュニケーションが活性化されることで炎症性サイトカインを過剰に産生し,関節破壊を生じる.これらの発現を阻害する生物学的製剤が臨床応用され,一定の寛解率を得た.しかし,重篤な感染症,心不全などの副作用のために治療の中断を余儀なくされる例や,中和抗体の出現により効果が減弱する例もある.既存のRA治療薬が使用困難なRA患者には,従来の治療法とは異なるアプローチで治療する必要がある.RA病態では,炎症性サイトカインの過剰産生 ,細胞と細胞外マトリックスを接着するインテグリンの機能異常などにより,細胞同士のコミュニケーションが破綻した結果,炎症性 の滑膜細胞が増殖して,破骨細胞が誘導される. 代表者は,この点に着目し,細胞間コミュニケーションを行っている細胞間結合装置であるギャップ結合について解析し,細胞間の情報伝達に重要なギャップ結合タンパクの1つであるconnexin 43は,ラットRAモデルにおいて高発現することを明らかにしてきた.一方,RAに対しても臨床的にリハビリテーション治療の1つとしての運動療法が推奨されているが,その適切な運動量は規定されておらず,connexin 43への影響も不明である.本年度はRAモデルラットをトレッドミルランニング装置を用いて強制走行させconnexin 43の発現への影響を検討した.炎症性サイトカインおよびconnexin 43の発現は,RAモデルラットの滑膜においてトレッドミル走行により低下し,関節破壊の進行を抑制した.以上から,RAに対する運動療法の分子生物学的な治療効果の1つを明らかにした.
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Int J Mol Sci.
巻: 19 ページ: pii: E1653
10.3390/ijms19061653
http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/orthoped/study/nankotsu.html