研究課題
周術期管理において敗血症は生命予後に大きな影響を及ぼす病態である。近年、敗血症において、ヒストンが大量に血液中に放出されることにより血管内皮細胞が破壊されることが、多臓器不全の一因となっていることが明らかとなってきた(Zeerleder S. et al,Care Med., 2003)。プログラムされた細胞死は、アポトーシス研究に始まり、ネクロトーシスやピロトーシス、オートファジー等が知られており、それぞれの細胞死において、共通の機構、さらに代償的に働く機構等、明らかとなってきている。本研究は、細胞死研究において、全く新しい細胞死メカニズムを追加することを目的とする。平成28年度は、Gene-trap法を用いてヒストン誘導性細胞死に関与する遺伝子の同定を行うため、Gene-trapベクターpGT-En2をPlat-E細胞にpCMV-VSV-Gと共にリポフェクション法により導入することにより、HAP1細胞に感染可能な組換えレトロウイルスを生産させた。感染効率を検討するため、pMX-GFPを用いた組換えウイルス粒子も調製した。DNA導入1日後、培地の交換を行い、さらに1日後にPlat-E細胞培養上清よりウイルス粒子を回収した。HAP1細胞への感染は、spin-infectionにより行った。感染効率の確認は、GFP陽性細胞を計測することにより行った。ウイルス感染させたHAP1細胞の培養液にヒストンを加え、細胞死誘導を行った。24時間後、培地を交換することにより細胞死を起こした細胞を除き、細胞死を起こさなかった細胞の培養を続けた。数日後、複数のコロニーが現れたため、それぞれのコロニーを単離培養し、再度ヒストン刺激を行い、ヒストン耐性となっているか確認した。現在までに耐性クローンは得られていないが、ウイルス感染の効率等、スクリーニング条件を検討し、耐性クローンの選抜を続行する。
2: おおむね順調に進展している
現在までにヒストン細胞死耐性クローンは得られていないが、スクリーニング条件を検討し、耐性クローンの取得を行う。
組換えウイルスベクター導入24時間後にヒストン細胞死を誘導しているが、ヒストン誘導性細胞死に関与する遺伝子および蛋白質の半減期が長い可能性があるため、組換えウイルスベクター感染後のヒストン処理時間の検討を行う。さらに、偽陽性クローンを排除するため、FACSAriaIIIによるソーティングを行い、GFP陽性細胞の濃縮を行う。GFP陽性細胞は、ヒストン細胞死耐性の確認後、Inverse PCR法によりウイルスベクターが挿入されている周辺のDNA配列を増幅し、ヒストン誘導性細胞死に関与する遺伝子の塩基配列の決定を行う。組換えウイルスベクター挿入によるゲノム上の破壊部位が一か所であることを確認するため、破壊された遺伝子をノックアウト細胞で発現させる戻し実験を行う。さらに、組換えレトロウイルス非感染細胞に対し、CRISPR-Cas9システムを用いて、候補遺伝子のノックアウトを行い、ヒストン誘導性細胞死耐性となることの確認を行う。
1万円以下であり、特に研究活動に問題は無かったと考えている。
次年度内に試薬などの消耗品として使用予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
Hepatology
巻: 65 ページ: 237-252
10.1002/hep.28878
J Biol Chem
巻: 292 ページ: 205-216
10.1074/jbc.M116.744755
PLoS Pathog
巻: 13:e1006162 ページ: 6162-6163
Biochem Biophys Res Commun
巻: 480 ページ: 23-28
10.1016/j.bbrc.2016.10.015
Sci Rep
巻: 6:37200 ページ: 37200-37201
10.1038/srep37200
巻: 291 ページ: 20739-20752
10.1074/jbc.M116.719302