本研究は,単球がさまざまな細胞障害刺激に応じて発生させるマイクロパーティクルに注目し,そのマイクロパーティクルに凝固を亢進させる作用があることを実験的に証明したうえで,局所麻酔薬がマイクロパーティクルの発生を増加させること,そのことに関連する分子薬理学的機構を解明することを目的として施行された. マイクロパーティクルの凝固活性を評価する方法としてフローサイトメトリーを利用した.FITCで蛍光標識を行ったフィブリノーゲンを新鮮凍結血漿とともに単球系細胞THP-1の細胞浮遊液に混合したところ,細胞浮遊液中に含まれる微小な粒子からFITC蛍光が検出された.ヘパリンを細胞浮遊液に添加すると,この微小な粒子に結合した蛍光は減少したことから,これらの試薬を利用したフローサイトメトリー実験系で凝固活性を有する粒子の観察が可能であると考えられた. また,これらのFITC陽性粒子は,早期アポトーシスのマーカーであるAnnexin Vにも結合することが確認できたことから,これらの粒子はアポトーシス小胞であり,そのなかでも直径が1μm未満の粒子がマイクロパーティクルに該当すると考えられた. このような実験系を利用して,局所麻酔薬ブピバカインが単球由来の凝固活性小胞を増加することを確認することができた.また,局所麻酔薬とともにsuperoxide dismutaseを添加すると凝固活性小胞の発生が抑制された.このことから,ブピバカインによる凝固活性小胞の発生には単球中のNADPHオキシダーゼの活性化が関与することが示唆された.
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