ミコール酸(MA)はNocardia、Rhodococcus等のActinomycetalesに属する土壌菌細菌により合成され、天然では疎水性の極めて強い脂肪酸である。菌体成分のなかでもMAは最も多量に存在する、菌の生存に必須な構造因子である。MAはα位に分枝鎖を、β位に水酸基を有する超高級分枝脂肪酸である。MAは免疫アジュバント活性があるばかりでなく抗原性を示すことも知られているが、実臨床応用された例はなく、また抗腫瘍効果について検討した報告もない。以前より我々は、このMAに着目し、基礎実験において抗腫瘍効果を認めている。そこで本研究ではMAの高い細胞性免疫賦活作用に着目し、これをリポソーム化することによって新規癌治療免疫製剤の開発を目指す。今回はとくにMycoabcterium bovis BCGが膀胱癌の再発予防に使用されているため、BCGのMAに着目して研究を行った。我々のグループはこのBCGMAをリポソーム化することに成功し、マウス皮下接種モデルにおいて抗腫瘍効果があることを発見した。またリポソーム化する際に陽電荷にするデンドリマーにおいても検証し、D12ではなくD22に抗腫瘍活性が得られる特性がある点も発見し、これらを合わせて、特許申請した(【発明名称】リポソーム、抗癌剤及び癌治療用キット【出願番号】特願2017-042228)。さらに、腫瘍周囲のTリンパ球も検討し、リポソーム接種の周囲にはCD8Tリンパ球の浸潤を認めることが確認できた。これらの新たな治験もあわせて、最終的に、PCT出願した【発明の名称】リポソーム、抗癌剤及び癌治療用キット 【出願番号】PCT/JP2018/008560。
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