平成29年度までに尿路癌患者の尿を用いたイムノコンプレキソーム解析法の手技を確立し、コントロールを含めた尿検体の採取・保存を進めてきた。そして、最終的に、膀胱癌患者101名、尿路感染症患者と健常人の各42名の尿を解析した。その結果、セルロプラスミンの免疫複合体を膀胱癌患者42名(41.6%)で検出したのに対して、尿路感染症患者では9名(17.3%)、健常人では2名(4.8%)と最も検出率の差が大きかった。 そこで、この結果を受けて、膀胱癌患者の尿中セルロプラスミン濃度を膀胱癌患者90名と健常人38名で測定したところ、膀胱癌患者で 605.0(214.6 - 1480.8)ng/mlに対して、健常人では154.4(71.9 - 294.1)と膀胱癌患者で優位に(P < 0.001)高値でった。 また、膀胱癌患者の組織176検体において、セルロプラスミンの発現を免疫組織学的に検討したところ、59名(33.5%)が高発現と判定され、正常膀胱粘膜組織(1/20=5.0%)より有意に発現率が高かった(P < 0.001)。さらに、 grade、Tステージ、転移の有無と有意に関連していた (それぞれ、P = 0.021、< 0.001、0.002). このように、セルロプラスミンが膀胱癌の病態や進展と関連する可能性が示唆されたため、現在、膀胱癌細胞株および化学発癌マウスモデルの組織を用いて、さらに詳細な検討を行っている。現在のところ、セルロプラスミンが血管新生関連分子に影響を与える可能性が示唆される結果が得られている。現在、これら細胞株、動物モデル、そして、臨床検体の結果を網羅的に解析しており、今後、多変量解析によるさらに詳細な解析を行う予定である。
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