研究課題/領域番号 |
16K15693
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
堀田 祐志 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 助教 (90637563)
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研究分担者 |
木村 和哲 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (00423848)
家田 直弥 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 助教 (00642026)
片岡 智哉 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (20737928)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | NOBL-1 / 男性性機能障害 / 光照射 / 4次元 |
研究実績の概要 |
PDE-5阻害剤の開発により勃起不全(ED)治療は画期的な進歩をとげた。しかし、糖尿病や前立腺がん時の全摘手術後の患者では、NO産性能が低下しているためPDE-5阻害剤の効果が低いことが問題とされている。我々はこれまでに、NOBL-1というNO放出を青色光照射により空間的(3次元)かつ時間的(1次元)に、つまり4次元レベルで制御できる化合物を作成した(J Am Chem Soc. 2014)。本研究では、このNOBL-1の軟膏製剤の開発と生体レベルでの応用を目指すこととした。 そこで、我々はまずNOBL-1軟膏製剤の開発に取り組んだ。NOBL-1製剤を、白色ワセリン軟膏に混合することで、NOBL-1軟膏製剤を作成することに成功した。現在、このNOBL-1軟膏製剤を利用し、in vivoでの応用を進めている。また、陰茎海綿体の白膜を除去した組織と除去していない組織を用いて等尺性収縮弛緩実験を行った。NOBL-1と青色光照射による陰茎海綿体の弛緩反応は、白膜が存在する場合では弱く、青色光が白膜で遮断され海綿体内部に十分に届いていない可能性が考えられた。そのため、当初の計画を変更し、より長波長でのNO放出剤の作成に取り組むことにした。その結果、黄緑色光(530-590 nm)によるNO放出剤「NO-ROSA」の開発に成功した。この大動脈を用いた等尺性収縮弛緩実験により、黄緑色光とNO-ROSAにより弛緩反応が制御できることを見出した(Org Biomol Chem. 2017)。今後NOBL-1軟膏製剤に加えて、NO-ROSAの軟膏製剤も作成し生体レベルでの有用性を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NOBL-1の軟膏製剤の合成は成功した。しかし、等尺性収縮弛緩実験から白膜付きの陰茎海綿体における反応を調べたところ、NOBL-1と光照射による弛緩反応が弱くvivoへの応用が困難であることが示唆された。そのため、生体レベルでの実験を一旦中断し、より長波長でNOを放出する化合物の開発を進めることとした。その結果、黄緑色光でNOを放出するNO放出剤NO-ROSAを開発することに成功した。今後、このNO-ROSAを含めてin vivo での検討を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
青色光によるNO放出剤であるNOBL-1、および黄緑色光によるNO放出剤であるNO-ROSAの軟膏製剤を作成し、in vivoで勃起機能への有効性の検討を行う。陰茎海綿体は白膜で覆われているため、本製剤では陰茎海綿体内のNO産生を補うことが不十分な場合も想定される。その際は、近赤外光などより長波長でNOを放出する製剤の合成につとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度はNOBL-1の軟膏製剤の作成と生体への応用を目指した実験を行う予定だった。マグヌス管で等尺性収縮弛緩実験を行ったところ、研究成果が予想に反した結果が得られ、当初のNOBL-1よりも、長波長で励起しNOを放出する試薬を作成する必要が生じた。そのため、当初の予定を変更しNOBL-1よりも長波長で励起しNOを放出するNO-ROSAを開発することとした。本年度は、NO-ROSAの開発まで行っており、生体レベルへの応用が十分に行えず次年度使用額が生じることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、当初の予定を変更し新たに開発した化合物であるNO-ROSAの軟膏剤作成、および生体への応用のための費用に充当する。具体的には、動物を用いて軟膏製剤の有用性の検討し効果を確認したのちに病態モデルにおける治療効果の検討を行う。これらの実験のための予算に充当していく予定である。
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