研究課題
本研究では婦人科がん進行症例を対象としてLiquid Biopsyの臨床的有用性を検討する。当初は患者末梢血をサンプルとして循環腫瘍細胞を検出し遺伝子変異の有無を調べる予定であったが、技術的な問題により昨年度より卵巣癌患者腹水中の「エクソソーム」をLiquid Biopsyの標的として研究を進めている。まず卵巣癌細胞株を用いた検討で、シスプラチン抵抗性に関与する分子として我々が大規模スクリーニングで同定した分子TIE-1について、エクソソームを介して薬剤耐性に関与するかを検討した。卵巣癌細胞株にTIE-1発現ベクターを組み込み、TIE-1強制発現細胞株を樹立した。その細胞株から採取したエクソソームではTIE-1発現量が増加していることをmRNAおよびタンパク質レベルで確認した。この細胞から採取したエクソソームと通常の卵巣癌細胞株から採取したエクソソームを、それぞれ卵巣癌細胞株に添加してシスプラチン感受性の変化を測定した結果、TIE-1発現エクソソームでは用量依存的なシスプラチン感受性低下を認めた。上記の結果より、TIE-1発現増加によりシスプラチン抵抗性となった卵巣癌細胞株がエクソソームを介して周囲の細胞にシスプラチン抵抗性を伝搬している可能性があると考えている。さらに本研究に関して当院倫理委員会の承認(2017-1-659)を得たうえで、対象患者のリクルートを行った。文書にて同意を得た5名に対して腹水の採取を行い、腹水を分注して-80℃フリーザーで冷凍保存してある。患者は再発卵巣癌に対して通常の抗癌剤治療を受けており、現在はその臨床経過を追跡中である。Liquid Biopsyを通じて、婦人科がん患者に侵襲の少ない検査で適切な個別治療を提供する事が本研究の意義だと考えている。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件)
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