研究課題
これまでの研究で妊娠平原ハタネズミに浸透圧ポンプを埋め込み、継続的に任意濃度のOXTを継続的に投与する実験系を確立した。しかし、29年度に行ったハタネズミの社会行動・向社会行動の測定系の樹立は不十分であり、1昨年に開発したOXTR(-/-)ハタネズミにつき、自閉症的な行動異常のポジティブコントロールとして最適、と判断し、これを用い、野生型ハタネズミと比較対照する方法で、ペア形成行動、共感性行動、社会記憶、USV(Ultra Sonic Vocalization)測定、Marble burryテスト(固執性測定)などの測定法がハタネズミに適用可能かを確認すると共に、その最適化を行った。社会行動・向社会行動異常を示すモデルリソースとして適格な、新規開発したOXTR遺伝子欠損ハタネズミに関し、導入された異常がOXTR遺伝子コード領域第1膜外ドメインの60bp長(20 a.a.)の欠損である変異ハタネズミから得た変異型OXTRcDNAを用いたin vitro実験(TGFαshedding測定法)により、受容体活性の完全喪失を確認した。29年度は、新たにこのOXTR(-/-)ハタネズミを用い、ペア形成行動、共感性行動(foot shockを元にした慰め行動測定)、ハタネズミ仔マウス(~14 DOB)に対する超音波コール(USV)、Marble Bury テスト、社会記憶異常などの各測定解析系を適用した。この結果、共感性行動、社会記憶、Marble Bury試験で明瞭な行動異常が確認された一方、USV測定では異常は検出されなかった。これらの結果は、これまでOXTR(-/-)マウスで報告されていた行動異常が全て同様にOXTR(-/-)ハタネズミでも観察されるわけでは無い事をも示し、齧歯類でも種間で様々な社会行動・向社会行動のOXT・受容体系への依存機構が同一とは限らない事実が示された。
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