研究課題
現在の生殖医学では着床能の評価法として確立したものはない。ヒトにおいて子宮頸部細胞は容易に採取でき胚移植を妨げることがない。本研究では、着床期マウスの子宮頸部上皮細胞の遺伝子発現を網羅的に解析し、着床マーカーとして利用できるかどうかを検討した。野生型マウスの着床前期から着床期にかけて時系列に、レーザーマイクロダイセクションで切除した子宮頸部上皮のmRNAをRNA-seqで調べたところ、着床期にかけて増加及び減少する遺伝子を抽出できた。PGRアンタゴニストRU486、エストロゲン受容体アンタゴニストICI182780、酸化ストレス誘導剤パラコートの投与により着床障害マウスモデルを確立したのち、子宮頸部細胞において着床期に向けて2倍以上増加するtranscriptのうち、RU486、ICI182780、パラコートによる3つの着床障害マウスモデルでいずれも発現低下したものが320遺伝子あり、着床特異的に変動する子宮頸部遺伝子を抽出できることが判明した。また、胚接着調節因子であるLIFの発現をみると、マウス子宮頸部上皮のLIFは着床期にかけて有意に増加し、RU486およびパラコートによる着床障害マウスで低下していた。さらにヒト子宮頸部上皮でも着床期にLIF発現が増加していた。以上の結果から、子宮頸部上皮細胞に発現する遺伝子を用いて着床能が評価でき、LIFがそのマーカーの1つになりうることが示唆された。マウスと同様にヒト子宮頸部細胞を用いて着床マーカーを抽出できれば、子宮内膜を侵襲せずに着床能を評価する方法が確立できると考えられ、ヒト不妊治療への応用が期待できる成果が得られた。
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