研究実績の概要 |
胎児期(子宮内環境)が成人期の心血管障害、糖尿病、慢性呼吸器疾患、精神疾患などのNon-communicable disease (NCDs)発症リスク因子となるDevelopmental Origins of Health and Disease (DOHaD)学説が注目されている。胎盤は胎児にエネルギー、栄養素や酸素を供給し子宮内環境の維持に重要な役割をはたす。胎児合併症や母体合併症において特有な胎盤病理所見を示すことが既に確立している。胎盤病理所見が児の成長後のNCDs発症ハイリスク群の同定に有用である可能性を想定して、その基礎的な検討として、胎盤病理所見と乳幼児期の発育・発達との関連を検討することを本研究計画の目的とする。前向き出生コホート研究Hamamatsu Birth Cohort (HBC)において胎盤が保存されている258名について、生後1, 4, 6, 10, 14, 18, 24, 32, 40, 54ヶ月時点の児の発育・発達(将来のNCDs発症リスクと関連した視点から)との相関の有無を検討する. 現時点での進捗状況として、胎盤病理所見として、Chorioamnionitis (CAM), Villitis of unknown etiology (VUE), Thrombus in placental stem vessels, Thrombus in decidua, Multiple branched villi, Immature terminal villi, Deciduitisの8項目の有無と出生体重、生後1ヶ月、生後4ヶ月、生後10ヶ月までの体重との相関を、種々の交絡因子(経妊数、妊娠前母体体重、妊娠前母体BMI, 分娩時母体体重、分娩前母体BMI、母体身長、母体年齢、母体喫煙の有無、分娩週数、胎盤重郎、児の性別、児の月例)を入力したMixed Mdelにて解析を行った。Mixed Mdelによる解析の結果、胎盤病理所見にMultiple branched villiを認める症例では、有意に体重の減少が認められた。胎盤病理所見と少なくとも生後10ヶ月までの児の発育と有意な相関が見いだされたことから、さらに高い月例のデータとの解析を現在進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前向き出生コホート研究Hamamatsu Birth Cohort (HBC)において胎盤が保存されている258名について、胎盤病理所見として、Chorioamnionitis (CAM), Villitis of unknown etiology (VUE), Thrombus in placental stem vessels, Thrombus in decidua, Multiple branched villi, Immature terminal villi, Deciduitisの8項目の有無と出生体重、生後1ヶ月、生後4ヶ月、生後10ヶ月までの体重との相関を、種々の交絡因子(経妊数、妊娠前母体体重、妊娠前母体BMI, 分娩時母体体重、分娩前母体BMI、母体身長、母体年齢、母体喫煙の有無、分娩週数、胎盤重郎、児の性別、児の月例)を入力したMixed Mdelにて解析を行った。Mixed Mdelによる解析の結果、胎盤病理所見にMultiple branched villiを認める症例では、有意に体重の減少が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
前向き出生コホート研究Hamamatsu Birth Cohort (HBC)において胎盤が保存されている258名について、平成28年度の解析に加えて、さらに、胎盤病理所見と生後14ヶ月, 18ヶ月, 24ヶ月, 32ヶ月, 40ヶ月, 54ヶ月の体重との相関の検討を進める。
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