研究実績の概要 |
子宮内における栄養環境、炎症性サイトカインへの曝露、比較的低酸素環境への曝露などの胎生期における環境因子は、正常後の発育発達に対して影響を及ぼすことが明らかとなりつつあり、Developmental Origins of Health and Disease (DOHaD)学説と呼ばれる。しかし、出生の時点で、将来の発育発達を予知する有効なマーカーは確立していない。一方、胎盤は胎児最大の臓器であり、母体から胎児への酸素供給、栄養共有、炎症からのバリアーなどの役割を果たし、胎盤病理所見は妊娠における環境変化を反映するとされている。 今回の研究計画では、胎盤病理所見は胎児発育、発達の予知マーカーとして有効であるという仮説を想定した。浜松出生コホート研究(HBC) に参加した1,200人の妊婦の中で、胎盤全体がホルマリンシールされて保存されていた単胎妊娠258例に対して後方視的な検討を行った。 Mixed Model解析の結果、胎盤病理のAccelerated villous maturation’ ならびに ‘Maternal vascular mal- perfusion’を認めた場合は、少なくとも生後18ヶ月までの間において、体重増加が低値であることが有意に予見できることがあきらかとなった。また、胎盤病理の‘Deciduitis’ を認めた場合は、少なくとも生後18ヶ月までの間において、ponderal index [PI]が低値、やせ体格であることが有意に予見できることがあきらかとなった。 胎盤病理所見が、正常後の体重増加や体格の予見因子として有用である可能性が明らかとなった。この研究成果をPLoS One誌に発表した(PLoS One,10;13(4):e0194988, 2018)。 さらに、女児において出生体重/胎盤重量比(F/P比)が高いことは、乳児期にアトピーに罹患するリスクを予見することが明らかとなり、論文投稿を準備中である。
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