研究課題/領域番号 |
16K15708
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
越山 雅文 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (50724390)
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研究分担者 |
吉岡 弓子 京都大学, 医学研究科, 助教 (10402918)
安彦 郁 京都大学, 医学研究科, 助教 (20508246)
濱西 潤三 京都大学, 医学研究科, 講師 (80378736)
小西 郁生 京都大学, 医学研究科, 名誉教授 (90192062)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 癌免疫 / 網羅的遺伝子変異解析 / 免疫細胞レパトア解析 / 網羅的遺伝子発現解析 |
研究実績の概要 |
卵巣癌は、半数以上が進行がんで診断され、その60%以上が再発しその多くが抗がん薬抵抗性となるため、婦人科がんの中で最も予後不良であり、新たな治療戦略が求められている。近年の分子生物学の発展により、がん細胞が免疫細胞の攻撃から逃れる「がん免疫逃避機構」の存在が明らかとなり、同機構を標的とした新しいがん治療が注目されている。 本研究では、卵巣癌の進行や抗がん治療によって、腫瘍微小環境のなかでもがん免疫機構がどのように変化するのかを、オミックス解析として統合的にがんゲノム解析をがん細胞と免疫細胞にわけてそれぞれ網羅的遺伝子変異解析Mutanome解析および、免疫細胞レパトア解析Immunome解析および網羅的遺伝子発現解析により解明し、同解析から得られるがん新規抗原(neo-antigen)候補を探索し、卵巣癌に対する新しい治療開発の基礎的検討を行うことを目的として主にヒト検体を用いた基礎研究を進めている。 今回の研究の主な目的は、(1)卵巣癌臨床検体を用いて、病態の変化や治療の前後でのT細胞レパトア解析を行い、免疫状態の変化と治療効果や生存期間などの様々な臨床情報との関連を検討する。(2)マウス卵巣癌腹膜播種モデルを用いて、病態の変化や抗がん薬投与前後での変化を解析し(3)(1)(2)の比較解析により得たがん新規抗原による新しい治療法開発の基礎検討を行うことである。 今回の研究の意義は、卵巣癌に対する宿主免疫の詳細な変化をモニタリングすることにより、現行の抗がん薬や分子標的薬とは異なる新たながん治療が生まれることが期待できる。また本研究では、従来の共通抗原を標的とする治療では不可能であった究極の個別化治療に繋がる可能性が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに進行・再発がんとして抗がん剤治療を受けた卵巣癌患者の臨床検体(手術および生検による腫瘍組織および末梢血)を用いて、抗がん剤治療前後での末梢血から末梢血単核球を分離し同細胞のRNA、DNA、を抽出した。抽出したRNAを用いて網羅的遺伝子発現解析を、DNAを用いて免疫細胞レパトア解析を行った。その結果、網羅的遺伝子発現解析によって抗がん治療により明らかに変化する因子(候補)を複数個抽出できた。一方で免疫細胞レパトア解析を行った結果、まだ検討症例数は少ないが、免疫細胞のレパートリー(多様性)変化を示す症例を認めた。一方で、再発卵巣がんの進行状態での上述の免疫状態について明らかに変化した因子は認めておらず、症例をさらに追加して検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度から進めている、進行・再発がんとして抗がん剤治療を受け、その後に無治療となっている卵巣癌患者の臨床検体も採取しており、上述の抗がん剤治療の追加検討と並行して、卵巣がんの病勢とともに変化する免疫状態や腫瘍の変化も上述の方法で検討する予定である。なお、いずれの症例も生存解析に至るデータがまだ十分ではないため、今後の観察により症例追加していく予定である。さらにマウス卵巣癌腹膜播種モデルを用いた検討については、上述のヒトでの解析により得られたデータをもとにして遺伝子発現(あるいは発現抑制)を用いた実験系を行い、上述のヒト、マウスの解析データを比較検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたペースで研究が進まず、よって使用金額も予定通りとはならなかった。臨床検体試験も動物実験も予定通りには進まなかったので、次年度に繰り越す形となった。
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次年度使用額の使用計画 |
マウス卵巣癌腹膜播種モデルにおけるマウス購入費や試薬費に使用予定。
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