研究課題
平成29年度は、まず前年度に計画した培養細胞を用いた実験に着手した。マウス卵巣癌由来細胞株OV2944-HM-1とマウス神経芽細胞腫由来細胞株Neuro-2aを入手し、タンパク質抽出液を調製した。それぞれを用いてウエスタンブロットによる分析を行った結果、FMRPのタンパク質量には両者で顕著な差は見られなかったが、抗CYFIP1抗体による解析では卵巣において明らかなシグナルの増強が見られた。これは、前年度に行ったmRNA発現量の分析において、CYFIP1のパラログであるCYFIP2の発現増強が認められたことと相関する可能性を示唆する。この点を明らかにするためには抗Largen抗体と同様に、CYFIP1とCYFIP2を感度良く識別する抗体の調製が必要であると考えられる。このin vitroでの実験結果を踏まえ、野生型マウスから脳、腎臓、肝臓、卵巣を採取し、各組織からRNAとタンパク質を抽出した。定量PCRによるmRNAとウエスタンブロットによる遺伝子産物の発現解析の結果は、ともに前年度ならびに上述のごとく今年度に得られた結果を支持するものであった。以上の結果から、少なくとも脳と卵巣においてFMRPとCYFIP1/2の存在比が異なることが確実であると考えられたため、両組織におけるFMRPの標的RNA分子を同定する実験に進んだ。即ち、脳と卵巣から細胞質抽出液に対して抗FMRP抗体を用いた免疫沈降を行うことにより、FMRPと共沈してくるmRNA分子群を精製する。集めたmRNAをライブラリー化した後、次世代シーケンサーによって分子を特定する。
すべて 2017
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Development, Growth & Differentiation
巻: 59 ページ: 33~40
10.1111/dgd.12334