研究課題/領域番号 |
16K15711
|
研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
利部 正裕 岩手医科大学, 医学部, 講師 (30382609)
|
研究分担者 |
吉野 直人 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (20372881)
杉山 徹 岩手医科大学, 医学部, 教授 (40162903)
阿保 亜紀子 (八嶋亜紀子) 岩手医科大学, 医学部, 講師 (80326686)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 腫瘍溶解性ヘルペスウイルス / 腫瘍免疫 / 腫瘍浸潤リンパ球 / 卵巣がん / 子宮頸がん / T細胞共刺激分子 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、卵巣がんにおけるMHC class I発現低下による免疫逃避機構に着目し、腫瘍溶解性ヘルペスウイルス(oncolytic HSV)を用いて免疫逃避改善を目指した新規卵巣がん治療法開発である。平成28年度は、in vitroでoncolytic HSV感染後のMHC class I発現およびT細胞共刺激分子の発現解析を検証済みであるヒトパピローマウイルス(HPV)E6/7に対する腫瘍抗原を細胞表面に発現するTC-1細胞でT細胞共刺激分子阻害薬や抗がん剤との併用用法の検討を行った。その結果、T-01感染後にTC-1細胞表面のT細胞共刺激分子発現は、in vivoとinvitroともに変化を認めなかった。また、両側腫瘍形成モデルで検証を行った。マウスの背側左右にTC-1細胞を移植し、右側にはウイルス接種、左側はウイルスを接種せずに腫瘍浸潤リンパ球の解析を行った結果、左側の腫瘍では未治療群と比較してウイルス治療群では腫瘍浸潤リンパ球数の増加を認めた。さらにT細胞共刺激分子阻害薬を併用するとその傾向は顕著となったが、右側にはウイルス接種腫瘍はに対する効果が減弱された。また、抗がん剤と腫瘍溶解性ヘルペスウイルスの併用の可能性についても検証を行った結果、一部の抗がん剤を併用すると腫瘍浸潤リンパ球が減少するにもかかわらず、腫瘍が縮小することが認められた。以上の結果より、腫瘍溶解性ウイルスにより免疫逃避が改善される可能性が示された一方、抗腫瘍免疫と一緒にウイルスに対する免疫作用が亢進し、ウイルスの作用を減弱している可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までは、これまで継続的に使用してきたTC-1細胞を使用したモデルでの検証は進んでいるが、卵巣癌培養細胞株(ID8)を使用した研究に関してはデータの再現性が乏しく遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
抗がん剤と腫瘍溶解性ヘルペスウイルスの併用の結果、一部の抗がん剤を併用すると腫瘍浸潤リンパ球が減少するにもかかわらず、腫瘍が縮小することが認められた。ウイルス感染に対するリンパ球反応を抗がん剤により抑えることにより、ウイルス増殖が促進され強い抗腫瘍効果が得られることが考えられる。今後は腫瘍からウイルスプラークアッセイなどを行い、ウイルス増殖が促進されているか検証する。また、T細胞共刺激分子阻害薬と腫瘍溶解性ヘルペスウイルスの併用に関しても腫瘍内の免疫状態に関してさらに詳細の検討を行う予定である。 また、卵巣癌培養細胞株ID8での研究に再現性がなければ、子宮頸がんモデルのみでの検証への変更も考慮する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
概ね、予算内で研究が行われているが、消費税の関係等で一部余った。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度は残額で購入できる試薬など検討し、年度予算内にまとめるように調整を行う。
|