研究実績の概要 |
脳科学領域で既に透明化手法がいくつか確立されている試薬(BABB, THF-DBE, Sca/e, SeeDB, Cubic-reagent1, Cubic-reagent2など)と手法(3DISCO, CLARITY, PACT-PARS, CUBIC)を用いて蝸牛透明化を試みたが蝸牛骨組織を完全には透明化することはできなかった。そこで、Sca/e法に改良を加え、内耳骨胞・内耳の透明化に成功した。Myosin7a(有毛細胞)、Neurofilament200(神経線維)、Rhodamine-Phalloidin(聴毛)、VGLUT3(内有毛細胞内小胞グルタミン酸トランスポーター)など多くの染色に成功し、特許出願した。この手法を用い、蝸牛のすべての有毛細胞数のカウント、老化マウスや音響外傷マウスでの障害の観察なども成功し、障害時のシナプスや蝸牛神経線維の変性の進行なども解析している。また骨や関節の透明化にも応用できることを確認している。 得られた膨大な蝸牛有毛細胞を解析する為に、機会学習を用いて蝸牛内全有毛細胞解析を行った。蝸牛内全有毛細胞の座標情報を基に3次元情報を保存した上程で頂部から基底部にかけてコルチ器の直線化を行った。残存有毛細胞ならびに推定脱落細胞の自動カウントプログラムを作成した。解析までは20から60分で完了し残存有毛細胞カウント精度は99.7%、推定脱落細胞カウントはヒトの行ったカウントと正相関した(R=0.9882)。また、直線化されたコルチ器を標準化することで蝸牛内脱落細胞のシミュレーション解析を行った。結果、蝸牛有毛細胞脱落には1つの脱落細胞があると近傍細胞に影響する(近傍効果)と脱落細胞は蝸牛内特定部位での障害されやすい(領域効果)が存在することが解明された。
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