研究課題/領域番号 |
16K15719
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊木 健浩 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (20755649)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 転写因子 / プラスミドベクター / クローニング / 多能性 / 表面マーカー |
研究実績の概要 |
〇direct conversionを行うための転写因子の絞り込み iPS干渉法を用いて、otosphereへの分化転換に必要な転写因子を選定していくため、otosphereにレトロウイルスでの転写因子の導入を行うこととした。前年のマイクロアレイ解析の結果から得られた100個の候補転写因子うち95個について、個々の転写因子のオープンリーディングフレーム (ORF) をクローニングした後、pMXをバックボーンとするプラスミドベクターにサブクローニングした。 〇otosphereのcharacterの調査 マイクロアレイ解析により得られた遺伝子発現において、幹細胞としての性質を調べるため、ES細胞と蝸牛感覚上皮細胞との比較解析によりotosphereとES細胞で発現の高い遺伝子を抽出した。これらの遺伝子について、遺伝子オントロジーエンリッチメント解析を行ったところ、「幹細胞らしさ」という単語を含む遺伝子オントロジーは認めなかったが、「細胞周期」にかかわる遺伝子を複数同定した。いくつかは細胞周期を抑制する働きを持つ遺伝子であり、培養の影響が関わっている可能性が示唆された。さらに転写因子の抽出を行ったところ、Trib3、Klf5、Hmga2といった多能性に関連する転写因子を同定した。この結果については、論文化し、PLOS ONEに投稿発表した。また、otosphereのみに高発現する転写因子も抽出し、qPCRを行って、確かに発現が高いことを確認した。otosphereに特異的に発現する遺伝子については表面マーカーを同定し、qPCRでも高発現であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
転写因子のORFを作成し、クローニングする過程に大幅な期間を要してしまった。 サブクローニングに関しては同一の制限酵素で切り出しができるよう、塩基配列を工夫した結果、順調に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
クローニングできていない残りの転写因子について、作業を進めていく。iPS干渉法ではotosphereに転写因子とSox2、Oct3/4、Klf4、c-Mycの初期化4因子を導入する予定であるが、導入効率のばらつきを極力抑えるため、初期化4因子はendogeneousに発現する よう、doxycycline (Dox) 投与で4因子を発現するtet-onマウスの蝸牛からotosphereを作成して、転写因子を導入後、Doxを添加して、培養を行い、iPS細胞へと変化するか観察する。昨年に引き続きマウスが入手できるよう、所有する研究室に働きかけていく。 〇候補転写因子の細胞導入 まず、蝸牛前駆/幹細胞のマーカーである Sox2 をレポーター遺伝子としてもつマウスの皮膚線維芽細胞に対して、20 種類程度まで絞った候補をレトロウイルスを用いて導入する。その後、otosphere を維持培養する培地で細胞培養を行う。otosphere を構成する前駆/幹細胞は Sox2を発現していることが知られており、Sox2 をレポーター蛋白で検出しながら、direct conversion が成立しているかどうかを確認する。Sox2 陽性となっている細胞に対して、otosphere で発現していると報告されている遺伝子 (Nestin や Bmp4 など)が発現しているか、免疫染色や RT-PCR で確認する。また、実際に有毛細胞へと分化するのか、分化培地での培養を行った後、有毛細胞のマーカーである Myo7a、Myo6 で免疫染色を行い、陽性となるか確認する。マウスで蝸牛由来の前駆/幹細胞への direct conversion が成功したら、ヒトでも応用可能か確かめる。ヒトの皮膚線維芽細胞にても上記の実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成29年度の使用額は元々の当年度交付予定額より超過しているが、平成28年度からの繰越金が多くあり、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 複数の抗体購入が必要であり、それに助成金を充てる予定である。
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