研究課題
遺伝性難聴の根本的治療法は未だ開発されておらず、多能性幹細胞を用いた再生医療の応用も期待されている。しかし内耳の解剖学的特徴から、聴力を温存しつつ標的部位に細胞を移植する直接的アプローチは困難である。本研究では幹細胞自身が細胞遊走能により標的部位へ侵入・生着・分化する幹細胞ホーミングと呼ばれる機構を応用した細胞導入法の開発を目的とした。方法:1. 骨髄間葉系幹細胞(MSC)におけるホーミング受容体の発現惹起。骨髄間葉系幹細胞は幹細胞ホーミング分子として知られるMCP1の受容体CCR2を発現することが報告されている。この受容体分子は培養ディッシュに一定濃度のケモカインを添加することにより発現上昇することが予備実験で明らかとなっており、定量PCRによりその最適条件を選抜して移植細胞とする。2. 内耳への移植手術。上記二種の移植用細胞を後半規管からの外リンパ液還流により投与する。蝸牛側の正円窓には、ホーミング因子とされるMCP1またはSDF1を融合したゼラチンハイドロゲルを留置し、MSCのホーミングを惹起する。結果:幹細胞ホーミング機構を惹起するため、培養ディッシュに一定濃度のケモカインを添加することにより有意にCCR2およびCXCR4分子の発現を上昇させることに成功した。これらを用いてケモカイン発現を惹起した内耳への細胞移植を行ったところ、内耳組織への有意な侵入細胞数の上昇が見られた。内耳における幹細胞ホーミング機構を応用することにより新たな内耳細胞治療法の技術が開発できると考えられる。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
Medical Hypotheses
巻: 114 ページ: 19-22
10.1016/j.mehy.2018.02.030
Int J Pediatr Otorhinolaryngol.
巻: 101 ページ: 204-210
10.1016/j.ijporl.2017.05.007