研究課題/領域番号 |
16K15726
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
塩谷 彰浩 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 耳鼻咽喉科学, 教授 (80215946)
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研究分担者 |
荒木 幸仁 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 耳鼻咽喉科学, 准教授 (70317220)
冨藤 雅之 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 耳鼻咽喉科科, 講師 (80327626)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腫瘍溶解性ウイルス / センダイウイルス / 抗腫瘍免疫 / 頭頸部癌 / 遠隔転移 |
研究実績の概要 |
細胞外基質を分解するウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)は、悪性腫瘍に特異的に発現しており、腫瘍の増殖、浸潤、転移に関与している。発現強度は癌の悪性度と相関があり、頭頸部癌でも高発現している。これまでセンダイウイルスを改変し、癌特異的なuPA活性依存的に細胞膜融合を誘導する腫瘍溶解性センダイウイルス「BioKnife」を開発し、様々な癌腫に対する抗腫瘍効果を報告してきた。今回我々は、BioKnifeによる擬似遠隔転移に対する抗腫瘍効果について検討した。擬似遠隔転移に対するBioKnifeの治療効果を検討するため、in vitroとin vivoの実験に分けて行った。in vitroの実験では、マウス由来の扁平上皮癌細胞株SCCVIIに対するウイルスの殺細胞効果や経時的観察を行った。in vivo実験では、頭頸部扁平上皮癌擬似転移マウスモデルを確立し、ウイルスの擬似転移巣に対する抗腫瘍効果、またその抗腫瘍メカニズムについて検討した。SCCVIIに対するBioKnifeの殺細胞効果については、SCCVIIが他の扁平上皮癌細胞株と比較し一番uPA活性が低かったので、連続投与による殺細胞効果を検討した。4日連続投与で力価依存的に有意な殺細胞効果を示し、経時的観察では細胞膜融合を引き起こし、細胞死を誘導していた。頭頸部扁平上皮癌擬似転移マウスモデルでは、BioKnifeを原発巣に注入することにより、擬似転移巣の抑制効果を認めた。細胞傷害性T細胞アッセイではBioKnife投与群で有意にエフェクター細胞の殺細胞効果を認めた。脾臓におけるフローサイトメトリー解析で、ウイルスベクター投与による免疫担当細胞の誘導を認め、組織学的に擬似転移巣内でCD8細胞の浸潤を認めた。BioKnifeによる抗腫瘍免疫の誘導は、予後向上を目指した新たな治療戦略を展開できるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究により、BioKnifeは原発巣に対する治療効果のみならず、抗腫瘍免疫の誘導により遠隔転移を標的とした治療も可能であることが示された。現在、特許出願中であり、その後国際誌に論文を投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
抗腫瘍免疫の効果をより直接的に証明するために、CD4細胞やCD8細胞などの免疫担当細胞を中和抗体や除去抗体を用いて特異的に取り除き、より確実に細胞性免疫の関与を検証する予定である。また、がん化学療法や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬やがんワクチンを含めた免疫療法と併用することにより、それぞれ抗腫瘍メカニズムが異なるため、治療の相加効果・相乗効果が期待できる。併用療法についても今後検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
特許申請の件もあり、国際学会での発表、論文の投稿を中断していた。次年度に旅費および投稿料として計上する予定である。
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