研究課題
本研究の目的は、申請者らが頭頸部がんに対する新規治療法として検討してきた腫瘍溶解性センダイウイルス(BioKnife)を用いて、腫瘍特異的免疫による転移巣への抗腫瘍効果の検討を行い、そのメカニズムの解明することである。免疫系が正常なマウス由来の口腔底扁平上皮癌細胞株(SCCVII)を口腔底に移植後に、体幹部へ再度腫瘍を移植し、頭頸部扁平上皮癌擬似転移マウスモデルを作成し実験を行った。In vitro実験でBioKnifeの至適投与量及び投与回数を決定し、そのデータを元に頭頸部扁平上皮癌擬似転移マウスモデルにおけるBioKnifeの抗腫瘍効果を確認したところ、BioKnife投与群がコントロールウイルス投与群及び無治療コントロール群と比較して有意に擬似転移を抑制することを確認した。BioKnifeによる殺細胞効果で誘導された免疫細胞がSCCVIIに対して抗腫瘍効果を示すかどうかを確認するため細胞傷害性T細胞アッセイを行ったところ、BioKnife投与群がコントロールウイルス投与群及び無治療コントロール群と比較して有意に抗腫瘍効果を示すことを確認した。脾臓におけるフローサイトメトリー解析では、BioKnifeおよびコントロールウイルス投与群で無治療コントロール群と比較し免疫担当細胞の誘導を認めた。擬似転移巣における免疫組織化学的染色では、BioKnife投与群でコントロールウイルス投与群及び無治療コントロール群と比較し、擬似転移巣内にCD8細胞を誘導することを確認した。本研究により、BioKnifeを原発巣に投与することにより、腫瘍免疫が誘導されることが示され、遠隔転移を標的とした治療も可能であることが示唆された。BioKnifeによる腫瘍溶解性ウイルス療法は、頭頸部癌治療の低侵襲化を実現し、患者のQOL向上・予後向上を目指した新たな治療戦略を展開できるものと考えている。
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Head & Neck
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10.1002/hed.25642